多趣味で生きる者の雑記帳

現在は主にごちうさに対する想いについて書いています。

きらファン「断ち切られし絆」第2部2章の感想と考察

 こんにちは。今回はきららファンタジアの第2部2章を完走したのでその感想と考察を書きたいと思います。第2部はかなり重めなストーリーですが、それ故に考えさせられる事も多いので、今回初めてブログで書き出してみたいと思います。

※注意※

 きららファンタジアメインシナリオのネタバレを含むものなので、その事を了解の上、読み進める事をお願い致します。また、内容も重めなので十分注意してください。また、本文中に出てくる「リアリスト」は「現実主義、写実主義」を意味するものではなく、「ゲーム内に登場する組織体」です。今回は括弧の有無に関わらず、特に脚注や注意書きが無い場合は全てゲーム内で使われる単語の意味合いを指します。

1.はじめに

第2部「断ち切られし絆」とは

 「断ち切られし絆」の名を持つ、きららファンタジアメインシナリオ第2部。どの聖典にも載っていない謎の存在である住良木(すめらぎ)うつつと共に、きらら達はうつつの特殊能力を手掛かりに彼女の故郷を探し求めて新たな旅に出ると言うのが主な流れである。

 特徴は何と言っても大筋を支配しているシリアスなシナリオで、メインシナリオ第1部と比較して序盤から壮絶な場面が多い。第1部では序盤では割と朗らかな雰囲気が漂っている事も多く、終盤ではシリアスな展開になるものの、それでも壮絶な運命に翻弄される事は無い*1為、全体的に見ると悲壮的な物語では決してなく、王道路線をゆく感触に仕上がっている。また、きらら達と対立する側の陣営も一部を除いてそこまで壮絶なしがらみを持っていない為、そこまで気を揉む事無くストーリーを楽しむ事が出来る。

 しかし、第2部では最序盤からシリアス色全開であり、対立陣営も底知れない闇を滲ませている、悲愴的な物語である。この時点で既に重いのだが、進めていけばいく程に闇は更に露呈していくストーリー構成はゾクゾクすらしてくる。現時点では2章までだが、1章からして壮絶で凄惨な物語であるし、恐らくこれから更に壮絶さは増していくと思われる。

 きらら達と対立する存在はハイプリスが筆頭で率いる「リアリスト」であり、彼女達は「真実の手」と呼ばれる所謂幹部を率いて、欺瞞(ぎまん)に満ちた*2この世界(エトワリアのこと)を正す為に活動を始める。そして、ハイプリスは「オーダー」以上の禁呪である「リアライフ」を用いて聖典の世界を破壊しようともしている。何故そのような事をするかは謎だが、それは今後の展開次第で分かる事であろう。

 因みに「リアライフ」とは負の感情を絶望のクリエに変える魔法であり、絶望のクリエはクリエメイト*3の命そのものを削る程に危険なものであり、更に絶望のクリエを吸い上げられ切ってしまったクリエメイトは消滅してしまうと言う、この上なく凄惨且つ残忍な顛末を遂げる事になる。果たして禁呪の魔法として恐れられる訳である。なお、同じ禁呪魔法である「オーダー」は、術者にも多大なリスクを背負う事になるのだが、「リアライフ」も現時点では明確な発言、描写が無いとは言え、ハイプリスの発言から察するに「オーダー」と同じ様に術者にもリスクはあるものだと考えられる。

何故第2部がここまで重いと感じるのか

 それはズバリ「人間の心の弱い部分が全面的に出ているから」である。まず第2部で登場する住良木うつつからして超が付くほど驚異のネガティブ思考の持ち主であり、何事も異常なまでに諦観*4している。また、かなりの捻くれ者でもあり、人の言葉を素直にポジティブな方向に受け取ろうとしない。ただ、極度のネガティブ思考なだけで根は決して悪い人では無く、寧ろ優しい所も沢山あるのだが、何れにしてもうつつちゃんのネガティブ思考はそのまま「人の心の弱さと、それに伴うエゴイズム(利己主義。自分本位な考え方。)」を体現していると言える。

 また、きらら達と対立する存在である「リアリスト」も中々に一筋縄ではいかず、特に「真実の手」が1人「ヒナゲシ」の存在がリアリストに影を落としている。ヒナゲシは「弓手」の異名を持つが、「真実の手」の中で一番の下っ端であり、それ故に「無能」と判断されて切り捨てられてしまう事を極度に恐れている。更にそれだけにとどまらず、ヒナゲシは自分自身の能力がパッとしない事に強いコンプレックスも抱いており、自分と同じ様な境遇*5でありながら自分と違って不幸でない人に対して激しい憎悪を見せ、その様なクリエメイトを執拗に闇に引き摺り落そうとする悪辣非道な一面を持つ。しかしながら、ヒナゲシ自身も壮絶な運命を背負っている事は明白であり、心の弱さを滲ませながらリアリストとしての活動を全うしようとしている姿は見ていて痛々しいものがある。だからと言って、リアリストがやっている事は到底看過できないのは至極当然だが、ヒナゲシがあそこまで精神的に追い詰められている事を鑑みると、リアリストには「同じ志を持つ仲間にすら冷酷無比な態度を容赦なく突き付ける」と言う様などうしようもない闇を抱えているとも言える。個人的には、身内にすら容赦なく牙をチラつかせる組織が何かしらの計画を遂行させようとしても上手くいくとは到底思えないのだが……。

 他にも色々あるのだが、兎にも角にも「人の心の弱さが全面的に感じられる」と言うのが大きい。しかしながら、これら心の弱さは見る者に対してメッセージを大いに投げかけるのも事実であり、今後の展開には目が離せない。ただ、あまりにも重過ぎて、目を背けたくなる気も分からない訳では無いのだが……。

2.第2部2章の感想

2章とは

 この2章はこれまでの第1部(外伝を除く)を含めて異例な点が一つあり、それは「オーダー若しくはリアライフで呼び出されたクリエメイトが登場しない」事である。今までは何かしらのきらら作品から選ばれた一つの作品の登場人物がエトワリアに実体をもって呼び出され*6、それを解決する為にきらら達が奔走するものだったのが、今回はスクライブと呼ばれる聖典の写本生*7をめぐるストーリーと全く異なっている。

 そして今回も新キャラが登場し、それは「スクライブギルド長『メディア』」である。スクライブギルドは街の名前であり、メディアはそこのギルド長を務めている。2章はこのメディア含めたスクライブが大きなキーポイントとなる。

メディアとうつつ

 ギルド長であるメディアだが、性格はとても明るく快活な人である。聖典が大好きで、自分がいる世界とは異なる世界がどんなものなのかを知る事が何よりも喜ばしい事だと認識している為、異世界に対する好奇心も強く、時に突っ走ってしまう事もしばしば。ただ、本質的には優しい人であり、相手の気持ちやペースを考え、持ち前の気質を活かして人を励ます事も多い上に、人の気持ちを汲み取るのも上手く、そういう意味では同じ志を持つ仲間にすら冷酷無比な感情が見え隠れするリアリスト達とは全くの正反対と言える存在でもある。また、ギルド長である事からスクライブを統率する事も役目であり、自身もスクライブとして聖典を写本する事に精力している。また責任感も強く、自分が果たさなければならない事を全うする為なら全力を尽くす人でもある。

 そんなメディアちゃんが、ネガティブ思考且つ消極的だったうつつちゃんの心を温かく受け止めていたのには、メディアちゃんが持つ心からの優しさを感じた。うつつちゃんは初めこそ「陽キャの考える事は意味わかんない……」と言って拒絶していたのも否めなかった*8が、次第に彼女に対して強い信頼を寄せる様になり、最終的にはうつつちゃんが身を挺してメディアちゃんの事を守ろうとする程に、うつつちゃんにとってメディアちゃんは最早失う事の出来ないかけがえのない存在になった。うつつちゃんにしてもメディアちゃんの様な存在は確かに自分とは全く違うが、無碍(むげ)にする事無く純真に接するメディアちゃんの底抜けの明るさと優しさに感化されたと言え、メディアちゃんと親交を深めていくと同時に、うつつちゃん自身も徐々に変化しているのが強く感じ取れた。うつつちゃん自身も自他問わず毒舌気味な点は見受けられるが、人の気持ちを何の罪の意識も無く平気で嘲笑ったり、馬鹿にしたりする様な事はしない人なので、メディアちゃんの純真な点に何か思う事があったのだろう。

 そして、うつつちゃんの変化を印象付けるものとして、メディアちゃんを純粋に助けたい強い意思の芽生えが代表的だと個人的には思う。うつつちゃんは前述の通り超が付くほどのネガティブ思考であり、それ故に何事にも諦観的で、おまけに全く素直じゃない捻くれた一面もあって1章では性格に難ありと言った印象が否めなかったが、2章においては言動こそ相変わらずなものの、誰かの為に自分が出来る事、やらなければならない事を何があっても貫き通したいと思う意志の強さが現れ始めているのがはっきりと確認できる。勿論こうなったのには一筋縄ではいかない事情があり、メディアちゃんとの親交を深めた事や、メディアちゃんを救いたい一心が大きいのは当然の事ながら、ギルド長メディアの護衛についていた、筆頭神官アルシーヴの側近である七賢者が1人、フェンネルとの確執*9や、それをめぐった摺り合わせ等、人間関係をめぐった対立とそれを乗り越える意志の強さを磨かれてた事が大きいと思う。自分の事を快く思わない者、快く受け入れてくれる者、それら様々な思想を持つ人たちと触れ合い、うつつちゃんは間違いなく変化してきている。この様に様々な観点からメディアちゃんの存在が与えたものは計り知れないものがあり、人望と言う観点からも正にギルド長に相応しいと言える。

 実はメディアちゃんもヒナゲシちゃんの質問に対する反応から元々は女神候補生だった1人と思われ、その事は意志が強いメディアちゃんの数少ない心の弱みとなっている。ただ、ヒナゲシちゃんとの対立を乗り越えて彼女の意思は更に強いものとなっている。今後もギルド長として活躍する事は期待できるであろう。

ヒナゲシが持つジレンマ

 2章においても1章の時同様「真実の手」が1人、ヒナゲシが主導となって立ちはだかり、今回は「汚染された聖典を写本によって広める」為に、スクライブをひっ捕らえ絶望に染め上げると言うかなりえげつない方法を用いている。そして本人の感情もえげつなく、ハイプリス様に切り捨てられる恐怖心からかなりの人海戦術を用い、計画を遂行する為なら敵を欺く事も厭わず、目的を達成しハイプリス様やお姉さまに認められるのなら、後は何も望まないと言わんばかりの感情であり、挙句メディアちゃんを連れ去らって闇の巫女に仕立て上げようとした時には「スクライブが元女神候補生も多い」事を突いて「君は女神候補生だったのに、挫折して、スクライブで我慢してる……。でしょでしょ?」等と悪魔の様な事を言って人の弱みに付け込んだ悪辣な精神攻撃を仕掛ける等、1章より更に卑劣且つ憔悴している面が目立っている。最早彼女にとって周りの人は「結果を出さないと一切の慈悲なく見捨てる。誰も、役に立つものしかそばに置きたくないから。」と言った認識が強過ぎる為にこの様になっていると思われるが、幾ら彼女が尋常ならざる過去を抱えていたとしても、どれ程彼女が辛い思いを抱えていたとしても、彼女がメディアもといスクライブに対してやっている事はハッキリ言って人としてどうなのかと言わざるを得ない。例え彼女が壮絶な痛みを背負っていたとしても……。

 しかしながら、ヒナゲシがここまで追い詰められた様な姿になっているのは「本心と行動が完全には一致していないからなのでは?」とも感じていて、早い話がジレンマ即ち板挟みである。抑々ヒナゲシちゃんがリアリストの活動に勤しむ背景には「自分が頼りにしている人から認められたい」感情が強く存在していると確信していて、その理由として彼女は追い詰められると度々「頼りにしている人から見限られると私はもう終わってしまう」と言った類の言葉を発している事にある。しかもそれ故にヒナゲシちゃんは自分の本心を押し殺してしまっている節があり、本当はやっていて辛い事でも「リアリストに見捨てられたくないから」仕方なくやっている面がある様な気がしてならない。無論、ヒナゲシちゃんもリアリストが掲げる理念には同意しており、実際に計画を遂行している為、彼女が望んでリアリストの活動に勤しんでいるのは事実だと思う。ただ、その一方でリアリストもとい「真実の手」のメンバーにおいて、能力がいまいちパッとしない事にコンプレックス意識が強くある事を示唆する様な姿も多く、実はリアリスト内においても彼女にとっては心から望んでいる様な安心できる場所だと言い切れない事情も大きく関わっているのかも知れない。言うならば「ヒナゲシちゃんにとって『リアリスト』は自分が憎んでいる聖典の世界を破滅させようとする人達が集まる理想の集まりだが、一方でその中でも周りから役立たずと思われる程に自分の能力が無い事実が、最早リアリスト以外に居場所がない彼女を窮地に追い込んでいる。言い換えると、自分が望んでいる世界に救われても苦しめられてもいる。」と言った事である。

 また、ヒナゲシちゃんには自分と同じ様なコンプレックスを抱えておきながら幸せそうな人に激しい憎悪を滲ませる面もある。実はこれも一種のジレンマであり、彼女は「大切な人に見捨てられたくない」と考えていて、それ故にリアリストの活動に勤しんでいる面があると思うのだが、実は私自身「人に見捨てられたくない願望は、本当は人から自分の事を認められたい事の裏返しである」とも思っている。言うならば彼女自身も不遇な環境でありながらも幸せを掴み取りたい願望が存在していると思うのだが、当のヒナゲシちゃんは自分と同じ様な境遇の人が幸せを獲得している人を見ると、本当は自分も望んでいる理想像である筈なのに、一方的に激しい憎悪が込み上げてきて、「何もかも破滅させてやりたい」願望が彼女を支配する。ただ、勿論その様な事をしても彼女は本当の意味での幸せは得られない。何故なら、他人の幸せを破壊した所で得られるのは一時的な欲求不満解消と長期にわたって続く虚無なのであり、何一つ創造性も持たないものである事は明確だからである。本人は欺瞞を正す為に正しい事をしているつもりであったとしても、その自分自身も実は欺瞞を働いてしまっている面がある事に気付かなければ、何時まで経っても苦しみから逃れられる事は無いのである。

 この様なジレンマを彼女が抱えているのには、恐らく「どこの世界にも、自分が幸せになれる事は無かった」と言う彼女の経緯が関係していると思う。ヒナゲシちゃんは1章、2章の発言から「自分はへっぽこだったから、ずっと幸せになりたくても幸せになれなかった」事を示唆する描写が多く、それ故に聖典の世界の破滅を望む、自分と同じへっぽこなくせに幸せそうにしているのを全く許せなくなっていると思われるのだが、その様なコンプレックスを抱える状態が長期にわたって続いた事で何時しか彼女の感情や思想をも徐々に歪ませていき、遂には自分も望んでいる様な幸せで人を憎む様にまでなってしまった。その様な痛みやジレンマを抱える事になってしまったヒナゲシちゃんの壮絶な想いは筆舌に尽くしがたい痛みを伴うものがある。

 更に、これは完全なる私の想像なのだが、もしかすると「彼女が持つ負の感情をリアリストに都合が良い様に利用されている結果」とも見る事もできるのではないかとも考えている。これは彼女自身がコンプレックスを抱いていた所に、彼女と利害関係が一致するリアリストがそれを都合の良い風に引き出させたのだと位置付ける仮定論であり、こう解釈しても彼女が抱えるジレンマが何故存在するのか一応説明する事は出来る。どういう事かと言えば、「ヒナゲシ聖典の破壊と汚染を望んでいるが、それは自身にとって聖典の世界が全く望みが無い憎しみの世界だからであり、関係性そのものを何もかも失わせたい訳では無く、本心から繋がりを示す全ての概念の破壊や汚染を望む様な人では無いのだが、その複雑な心境をリアリストに付け込まれ、『不遇の人が幸せになる事はいけないなのに、聖典の世界ではそれが当たり前の様に存在している。』と教え込まれた」と言う様な事である。元々彼女は自分を大切にしてくれている人から認められたいだけだったのに、何時しか心の闇を組織に良い様に利用させている面があるとも思えてくる事を仮定したものである。ただ、我ながら突拍子も無い考えではあるとは思うし、実際には恐らくあり得ない考えだとは思うのだが、現段階ではそんな気もしてならない。最早ヒナゲシちゃん以上に悪魔な気がしてならないが……。

 ここまでヒナゲシちゃんが抱える心境をジレンマの観点から考察してきたが、もし彼女が一切のコンプレックス意識を持っていなかった若しくは、持っていたとしてもそれこそ分け隔てない優しさを持つギルド長のメディアちゃんやきららちゃん達、そして実は人の心に寄り添える確固たる器量を持っているうつつちゃんなりが真っ当な方法で彼女を認めていたとするならば、聖典に対して多少の憎しみはあったとしても、「リアリスト」がやっている事の様な破壊的で凄惨たる道を歩む事も無かったのかもしれないし、あの様な最低な手段を使って何もかもかなぐり捨ててしまうまでに、自分が望むものを掴み取ろうとする必要性も無かったのかもしれない。何故なら、ヒナゲシちゃんにとって何よりも嫌な現実は「誰にも自分自身を全く認めてもらえない」事であるのだから、1人でも自分の事を無条件に認めてくれる人がいれば、態々自ら破滅の道を歩みかねない様な事までしなければならない程に追い詰められる事も無かっただろうし、それに、誰にも認められないのが嫌だと言うのならば「例え自分が理想とする世界を生み出そうとしているリアリストが望む計画を完遂する事が出来たとしても、認めてくれる人が1人もいなければヒナゲシちゃんにとっては嫌な世界である事に変わりはない」事だって十分にあり得る話である。

 しかしながら、ヒナゲシちゃんは明確なコンプレックスを持っている為、例えリアリストの一員では無かったとしても聖典の世界の破壊と汚染を望んだ可能性は高いが、何れにしても彼女がやっている事はただの身勝手な八つ当たりであり、短絡的なものである。しかし、その短絡的かつ身勝手な手段を用いなければならない程に今の聖典の世界が憎たらしく、この手であの憎い聖典の世界を破滅させたい願望が、彼女をどうしようもないジレンマに叩き落している可能性がある事を私は睨んでいる。彼女が本当はどうしたいのか、今は良く分からないが、章が進むにつれて判明すると思うので、今後のヒナゲシちゃんの動向からは目が離せない。彼女は本当は何を望んでいるのか、それを見極める為にも……。

サンストーンときらら  

 ハイプリスが最も信頼を寄せる存在である「真実の手」が1人、サンストーン。「右手」の異名を持ち、人と人の繋がりである「パス」を断ち切る事の出来る能力がある。ハイプリス様に対しては絶対的な忠誠心の持ち主であり、心からハイプリス様の下にあると公言している。尤も彼女は人と人の繋がりを断つ事の出来る能力を持っているので、見方によってはハイプリス様でさえ平気で裏切る事だって容易に出来る事を意味するし、更に飛躍させれば「絆を断つ事の出来る能力を持つが故に、普通の人以上に人間関係に対する悲しみと痛みを背負わなければならない壮絶な運命を課せられている」とも言える。勿論彼女がそれら諸事情をどう捉えているかは良く分からないのだが。

 また、2章ではサンストーンと共にリアリストの1人である「スイセン」と共に行動している。このスイセンも中々に癖のある人物で、性格や物事の考え方はお世辞にも良いとは言えず、言動もとても馴れ馴れしく、人によっては苛立ちを隠せない若しくは生理的に受け付けられないタイプであると思っているきらいが私自身存在している。要するにスイセンは人を選ぶ性格をしている事*10になるのだが、一方で根っからの悪い人では無いとは思う。これにはどうもリアリストに所属している事が相当に悪影響を与えている様で、これは所謂「無意識のバイアス」である。ここでは「無意識のバイアス」については詳しく触れないが、この作用はしばしば物事の見解を狂わせるものである事は把握した方が良いだろう。

 そんなサンストーン達だが、2章の終盤にて「スイセン」と共にきらら達の前に立ちはだかる。が、これはあくまで戦略的撤退と言うものであって、実際にサンストーンと交戦はしていない。尤もスイセンとは交戦しているが、勝利してもさっさと撤退してしまう*11。その為、きらら達にとっては今まで基本的な関わりが無かった者達なのだが、きららだけが何故かサンストーンに対して、最早有耶無耶になった過去の記憶に縛られ、胸がきつく締められる苦しさを覚え、挙句きらら自身も訳の分からないままに涙を流していた。どうもサンストーンときららにはただならぬ事情がある様で、それはハイプリスでさえサンストーンに対して「君はそれでいいのかい?」「きららは君のー」等と気に掛けていた事がそれを裏付けさせる結果となっている。尤も当のサンストーンは「その絆はとうに『切れて』います」と答え、全く懸念する必要は無い事を示す態度をとっている。絆を断つ事の出来る能力を持つ者である事もそうなのだが、それ以上にハイプリス様に最も信頼を置かれている存在なので、そう答えるのはある意味当然の道理ではある。 

 きららとサンストーンの関係性についてだが、2章では正直断片的な情報なのもいい所で、こうだとハッキリ言える要素は存在しない。しかしながら、断片的な情報から考えられるとするならば私は主に下記の2つがあると思う。

  • 昔は深い関係性にあったが、サンストーンが自らの能力で断ち切った昔なじみ若しくは元々近しい存在
  • 赤の他人同士だったが、互いに強いインパクトを刻み付ける出逢いを経験した過去を持つ関係性

 1つ目はもしこれが本当ならば残酷且つ悲愴的なものであり、出来る事ならこうであって欲しくないと願いたくなる程の考えである。この考えの背景には、きららちゃんは「人と人の繋がりの『パス』を感じ取れる」人であり、『パス』を断つ事の出来る能力を持つサンストーンとは真逆の能力を持っている事実が深く関係している。

 これを仮定するならば「きららちゃんとサンストーンは嘗ては深い親交を持っていたが、次第にサンストーンはきららちゃんの事が何らかの事情で気に入らなくなり、自分の能力を用いてきららちゃんとの絆を一方的に断ち切った」となるだろう。当然ながら、昔なじみと一切合切絶交する事は相当な心身の痛みを伴うものであり、ましてや人の繋がりを感じ取れるきららちゃんなら尚更である。ただ、サンストーンの能力は「抑々繋がっていた事すら忘れさせてしまう」ものである為、普通の人は抑々痛みを覚える事すらできない筈である*12のだが、きららちゃんは前述の通り「パスを感じる能力」があるので、何らかの理由でかつてあった筈のものを失っている事実に本能が気付き、自分の意思とは関係なくサンストーンに引き寄せられ、失ったものに対する痛みと悲しみが込み上げ、涙した可能性がある。勿論これはあくまで仮定論なので、今後の展開次第では全くの思い違いである事が判明する可能性も十分にあるが、きららちゃんもサンストーンも特殊能力を持っているので、普通なら考えられない様な事があり得たりする可能性もある為あながち間違いとは思えない。

 2つ目に関して言えば、正直言ってきららちゃんとサンストーンの関係性についての真相にたどり着ける材料になれる可能性は低いであろう。この考え方は、言うならば「人生を変える様な出逢い」を根拠にしたものなのだが、この場合サンストーンが「きららちゃんとの絆を切った」動機が比較的短絡的なものになってしまう上に、きららちゃんがサンストーンと対面した時に、抑々何故に嘗てそこまで親密な関係性も無かった人に対して涙するまでに困惑したのかその理由に戸惑ってしまう。幾らきららちゃんが人の繋がりを感じ取れるとは言え、今まで出逢ってきた個々人を明確に思い起こせるものでは無いので、この観点からきららちゃんとサンストーンの関係性を勘ぐるのは正直無理があると思う。

 となると、やはり1つ目の仮定論である「きららちゃんとサンストーンは昔から何かしらの関係性を持っていたが、サンストーンがそれを断ち切った」可能性がより高くなると思うのだが、何れにしても2章で明らかになった事が少なすぎる為、ここで断定する事は難しい。抑々きららちゃん自身も出自が謎な面が多く、きららちゃんとサンストーンがどの時期に出逢っていたのかすら良く分からない。もしかするとそれ程遠くない昔に出逢っていた可能性も考えられるし、或いは赤の他人に毛の生えた程度の関係でしかない様な可能性も考えられる。もっと言うなら、私が提唱した2つの推察を組み合わせたものこそ、実は最も真理に近づくものの可能性だって十分あり得るし、どれをとっても全くの頓珍漢な考えだったと判明する可能性もある。

 ただ、きららちゃんとサンストーンの関係性はただならぬものだと言うのは確かだと言え、その関係性の真相はきららちゃんとサンストーンだけでなく、ランプちゃんやうつつちゃん、果ては「リアリスト」にも多大な影響を及ぼす可能性も考えられる。現時点では如何ともし難いが、この2人の動向を完全に無視する事は最早できないだろう。

3.まとめ

 今回のメインシナリオ第2部2章のシナリオは、様々考えさせられるものであったと思う。ギルド長メディアちゃんとうつつちゃんの正反対ながら心開き合った仲柄に、そんな仲柄を憎み絶望に染め上げようとするヒナゲシちゃん、スクライブギルドを巡った「リアリスト」の思惑、そして謎が謎を呼ぶきららちゃんとサンストーンの関係性等々……、一つ一つ挙げていけばキリがない。それ程複雑に絡み合っている。

 私が思うにこの2章に限らず第2部と言うのはそんな複雑に絡み合った関係性一つ一つに実は強いメッセージなるものが込められていて、それを紐解いていく事で様々明らかになっていくのだと考えている。第2部は全体的にシビアな展開が多く、読む者の心に大きく訴えかけるものがあるが故に中々気楽に楽しめるものでは無いのだが、その分内容が非常に濃いものになっている。ストーリーが濃密なのはのめり込む様に読み進める事が可能になる事もあって個人的には好きであり、それ故にメインシナリオ第2部のテイストは気に入っているのだが、正直に言うと同時に重い話だと言うのは感じ取っている。壮絶な話をどう解釈するのかそれが大きな分かれ目となるのはきらら作品で当てはめるなら、かの「がっこうぐらし!」が代表的になる*13のだろうが、私は「がっこうぐらし!」をきちんと読んだ事もアニメを観た事も無いのであくまで推察ではある。なお、アニメ「がっこうぐらし!」の脚本(4話と11話)と、きららファンタジアメインシナリオ第2部「断ち切られし絆」のシナリオは何れもきらら作品「ライター×ライター」の原作者である深見真先生が担当している。アニメ「がっこうぐらし!」の脚本を担当したのと同じ人がシナリオを担当しているのが理由だと思うのだが、過酷な運命を背負っている状態や、イレギュラーな事態だからこそ問われる人間の本質と言うものはきららファンタジアのメインシナリオ第2部においても通ずるものがあると私は考えていて、もっと言うならその熱時たる想いを汲み取っていく事こそ、私にとっては数多ある読者像における一つの姿であるとも考えている。

 また、全体的に見ると暗いテイストが多いとは言え、明るいテイストもしっかり用意されていて、2章で言うならスクライブギルド長であるメディアちゃんがその筆頭格である。彼女が持つ純真たる明るさは間違いなく本物であり、それはそのまま人々の心を明るく照らしてくれている。その明るさをもってあの超が付くほどのネガティブ思考であるうつつちゃんの心を動かし、うつつちゃんが変化したのは2章の中でもとても印象的であり、その変化はそれまでうつつちゃんの事を半信半疑で接していたフェンネルの心をも動かす事になった。この変化にはメディアちゃんの明るさはさることながら、うつつちゃん本人の気持ちの変化が大きく関わっているのは言うまでも無いが、この様に過酷な状況が続く中で心の変化と成長を感じ取る事の出来る構成は心に沁みわたるものがある。

 そして「リアリスト」が1人、ヒナゲシちゃんについては所謂敵対組織と言える立場でありながら自分自身について思い悩む描写がしばしば散見され、サンストーンに至ってはきららファンタジアの主人公であるきららちゃんと何か特殊な関係性を匂わせる等、敵側陣営においても一筋縄ではいかない事情が蠢(うごめい)ているのが感じ取れる。単なる勧善懲悪にとどまらないストーリーそのものはメインシナリオ第1部においてもそういう傾向にあるのだが、あちらは中盤以降にその流れが見えてくるのに対して第2部では序盤から既に片鱗が見え始めている。今後「リアリスト」の理念が明らかになるにつれて更にとてつもない事実を突きつけられる可能性は高いと思われるが、それと同時に何か特殊な感情が芽生える可能性も十分に考えられる。「リアリスト」そのものについてはこれから明らかになるものが増えていっても、感じるものが人によって大きく分かれる可能性は高いが、何か響かせるものがあると私は確信している。

 以上が、今回のメインシナリオ第2部2章で私が抱いた感想と考察である。この先の展開次第では誰も予想できない様な全く予想外の方向に突き進む可能性も十分にあり得るが、私としてはどんな展開を迎えても楽しみであるので、今後の展開を早く見られる事を楽しみに置いておきながら、気長に待つ事にする。

*1:展開こそ中々に壮絶だと思う面もあるが。

*2:この場合、嘘と偽りに満ちた世界と言った意味合い。

*3:クリエを生み出す者と言う意味であり、クリエはエトワリアの世界の人々にとって、生きる力の根源である。

*4:諦めの気持ちをもって物事を見据える事。

*5:1章のシャミ子こと吉田優子が顕著な例。

*6:きららが用いる「コール」はあくまで力を借りるものであり、別世界の人をそのまま召喚する訳では無い。

*7:なお、写本した聖典は写本生が祝福を掛けないとクリエを生み出す聖典とは言えないらしい。この為、写本生は巫女でもあり、もっと言うなら元々は女神候補生だった人も多い。

*8:メディアちゃんとうつつちゃんは性格が正反対である事も起因している。

*9:フェンネルも決して悪い人では無く、寧ろ物事に対して真面目過ぎる程誠実な人であり、絶対的な信頼を置ける人なのだが、それ故に融通が利かない部分が玉に瑕となっている。とは言っても最終的にうつつちゃんの事を認めている。

*10:尤も「人を選ばない性格なんてあるのか?」と言われると微妙な話なのだが。

*11:このためフェンネルは「この卑怯者め!恥を知れ!」と彼女を罵っている。

*12:サンストーンに「パス」を断ち切られた者は、それまでの良き交友関係を忘れ、憎しみに駆られる事が大半な為。絆が無ければ憎悪に支配されるとは、何とも形容し難い痛みが読み手にも伴ってくる。

*13:がっこうぐらし!」はきらら系の中ではかなりの異色作ながら同時に名作とも謳われている。