多趣味で生きる者の雑記帳

現在は主にごちうさに対する想いについて書いています。

きらま2021年8月号掲載のごちうさを読んだ感想

 こんにちは。次々にごちうさの新情報が飛び込んできて、正直どういう風に受け止めれば良いのか分からなくなる程に喜ばしいのが本音ですね。時には長きにわたって思い悩む事もありましたけど、ごちうさを今まで好きであり続けて本当に良かったと最近より強く思うばかりです。

 さて、今回はまんがタイムきららMAX2021年8月号掲載のごちうさの感想を書きたいと思います。今月は何と言っても神沙姉妹の活躍が目立つ回だったのでその事を中心に書き出したいと思いますが、他の人達もしっかりと見つめた上で思った事を丁寧に書き出したいと思っていますのでご安心ください。

※注意※

最新話のネタバレを含むものなので、その辺りをご了解お願い致します。また、ここで書き出した推察や考察は個人的な見解です。

1.はじめに

 今回のお話は旅行編からの登場であり、チマメ隊と冬優ちゃんの同級生にしてマヤメグと同じお嬢様学校に通っている、喫茶店ブライトバニーの社長令嬢でもある神沙(じんじゃ)姉妹に焦点が当たったものであり、今回はその神沙姉妹に隠された謎に迫っていくのが一つのポイントになっている。また、今回はそんな神沙姉妹を温かく迎え入れている友達の熱き友情物語も必見であり、今回は全体的な主役は神沙姉妹である事は疑いないが、その神沙姉妹と友達である存在にも目が離せない回だと言えよう。

 今回のお話は神沙姉妹の一日の始まりから描写がスタートし、心愛ちゃんと紗路ちゃんによるちょっとした楽しい登校のひと時、マヤメグとの学食タイム、恵ちゃんと映月ちゃんと言うのんびり且つマイペースコンビによるフルール・ド・ラパンの物語と続き、フルール・ド・ラパンを巡ったちょっとした諍い(いさかい)を乗り越えて、改めて姉妹の大切さと友達の大切さを再認識させられる描写をもって締めとなるものであり、この中でも重要なのはフルール・ド・ラパンを巡ったものからの流れだと思うのだが、それは後に記載する。

 また、個人的には最も重要な事だと思うのだが、それまで謎に包まれていた神沙姉妹の姉妹関係が遂に満を持して明らかになった回でもある。どちらが姉で妹かはこの後の文章を読み解けば分かる事だが、私としては「衝撃」の一言に尽きた。一体何がどうだったのか。今回は嘗て私が昔考えていた神沙姉妹の人柄を元手に人物像をさらに深掘りして、そこから本編の物語にどのような影響を与えたのか、その事に対する考察も交えながら記載したいと思う。

2.神沙姉妹それぞれの人柄について

双子のお嬢様姉妹

 前述の通り今回のお話は神沙姉妹に焦点が当たっているのだが、まずはこの2人について、私が知る限りの事を丁寧に書き出したいと思う。神沙姉妹とは原作コミックス8巻の旅行編で初出したキャラクターであり、アニメには冬優ちゃん共々未登場。名前はそれぞれ神沙夏明(じんじゃなつめ)、神沙映月(じんじゃえる)と言い、双子の姉妹*1である。双子故に非常に似ている為、彼女達を良く知らない人は外見だけで判別する事は難しいが、判別ポイントとして髪が長い方が映月ちゃん、短い方が夏明ちゃんと言うのが最も分かり易いポイントだろう。

 喫茶店ブライトバニーの社長を父に持つ、所謂社長令嬢であるが故に育ちが良く、幼少期から英才教育の手ほどきを受けてきた印象が見受けられる。しかしその一方で親の仕事の都合故なのか転校が非常に多く、それ故に同年代の人達と深い関係を築く事ができず、またその同年代の人にしても自分達より家柄を見ていた傾向も相まって、2人共に人と関わるのを極端に避ける姿が目立っていた。確かに友達を作ろうとしても、やっと仲良くなり始めたと思ったらすぐに転校してしまうわ、抑々周りの人達が人柄よりも家柄ばかり見ているわとなれば無理はないのだが、周りの人にしても神沙姉妹のキャッチー(注意を引く様な)な一面として家柄があり、そこから彼女達を知ろうとしていた可能性も考えられる上、周りの人達にしても転校が多い神沙姉妹と仲良くなり切る前に関係性が遠のいてしまった事も十分に考えられる。つまり神沙姉妹が思っている程周りの人達はそれ程冷たい人ばかりでも無かった可能性があった(何なら良い人達もいた)という事なのだが、こう考える背景には、神沙姉妹からの視点からしか知らず、神沙姉妹が言う周りの人達の言い分を全く知らない為に、神沙姉妹の言い分だけを聞いて判断する事自体不適切であると考えているからである。偏った意見だけを吸い上げて判断しようとしても真理には近つけず、寧ろ遠のいてしまう事を思うなら尚更である。勿論、神沙姉妹の気持ちは痛い程理解できるし、人を見ずに属性ばかり見ようとする周りの人達にも問題が無い訳では無い事も分かっているのだが、それでも私としては神沙姉妹の意見だけを汲み取って、一方的に周りの人達が全て悪いと思う事はやってはいけない事だと考えている。難しい問題ではあるのだが、私は色々な意見を聞いて、そこから立場を明確にして述べるべきだと考えている。

 また、神沙姉妹が人と関わることを避けていたという事は、必然的に姉妹関係が親密になっていく事を意味していたとも言え、事実姉妹仲がとても良く、何時も2人一緒に行動している事が多い。2人で行動している時は、のほほんとしている事が多い映月ちゃんをしっかり者の夏明ちゃんが引っ張っていく事が多く、その事から私は夏明ちゃんの方が姉だと思っていた。無論、蓋を開けてみると見事なまでに間違っていた訳なのだが……。

 2人共自分の本心を積極的に見せる様な人ではなく、特に夏明ちゃんがこの傾向が顕著にある。これも前述の経緯が関係している可能性があると考えられるが、普段から喜怒哀楽を見せない訳でも無く、寧ろ感情豊かな面があり、この辺りは嘗ての智乃ちゃんとも今の冬優ちゃんとも異なっている。また、2人共人柄が良く、本当は争い事を好まない心優しい性格をしているのが読み込めるため、誤解されやすい面こそあるものの、本来は人から好かれる人柄をしていると言って良いと私は考えている。

 ここからはそんな神沙姉妹それぞれの特性について書き出したいと思う。

のんびりとしたお姉さん

 ここで少し思い返してみよう。今回のお話は神沙姉妹の姉と妹が判明する回だと書いたが、その内容が私としては「衝撃」だったと書いた。何故なら、しっかり者の夏明ちゃんが姉では無く、のんびりマイペースな映月ちゃんの方が姉だったからだ。別に映月ちゃんの方がお姉さんだった事実に対して異論は全く無い*2のだが、如何せん一般的なお姉さん像とは全く無縁の姿しか見せていなかった為、てっきり夏明ちゃんが姉なのかと思っていた為に意外だった。とは言っても「マイペース且つのんびり屋なお姉さん」ごちうさの中でも唯一無二と言っても良い立ち位置*3なので、私としてはマイペースでのんびり屋な映月ちゃんがしっかり者たる夏明ちゃんのお姉ちゃんであっても全然良いと思っているし、寧ろお姉さんである事でより映月ちゃんの魅力が深まった様にも感じている。

 そんな映月ちゃんだが、性格は何度も書いてきた様におっとりしたマイペース且つのんびり屋で、普段からガツガツ前に出る様な事は無く、かなり控えめな印象を受ける。普段から周りに対して過剰とも言える程に気を張っている夏明ちゃんと違って、映月ちゃんは気を殆ど張っておらず、何時ものほほんとしていると言う、所謂呑気者な一面がある。それ故かどうかは分からないが、しっかり者たる妹の夏明ちゃんと比べてどこか抜けており、且つややだらしのない面があり、特に朝に弱い一面が窺える。更に言えば、その様子は姉のマイペースな性質としっかり者の妹と言う事も相まってココチノを思わせる*4ものであり、不思議なシンパシーを感じるものにもなっている。これに限らずごちうさにおいては立ち振る舞い的な意味でのキャラクターにおいてもしっかり者が妹で、マイペースなのが姉と言うケースが多いが、これは何故(なにゆえ)なのだろうか……。

 所謂良家出身のお嬢様且つお姉ちゃんではあるが、普段はそこまでお嬢様とは感じられない上に、地位や名誉に対して執着心は全く無い様に感じられ、世間一般的に言われるお嬢様とはかなり違った人柄*5をしているのが窺える。しかしながら、その一方で自分が思った事を一切の躊躇なく人に話す事ができる度胸の大きさと、何があっても決して折れない芯の強さを併せ持っており、物怖じせずに思った事をストレートに言う特性は時に人を困惑*6させてしまう事もあるが、一方で後述する様に大人をも動かす力をも秘めている。その為、映月ちゃんは「普段はおっとりしていて且つのんびりとしているが、他方では誰かの為なら大人相手に物申す事も全く厭わない*7芯の強さを併せ持った、実は気概*8に溢れる人」だと言える。つまり可愛さとカッコ良さを兼ね備えた人だという事であり、女の子としての可愛さと、人情味溢れるカッコ良さ、その両方を併せ持つ意味では理世ちゃんにも通ずるものがある。ただ、理世ちゃんと大きく違うのは普段の特性であり、理世ちゃんは「普段はサバサバした男勝りのカッコ良さ即ち姉御肌気質だが、その内には誰よりも女の子らしい可愛らしさを持つ」のに対して、映月ちゃんは「普段はマイペースでお淑やかな可愛さを持つお姉さんだが、その一方で何があっても決して折れ切らない芯の強さを持った、気概に溢れる精神力を内に秘めている」のであり、普段の特性と内面の特性が逆の関係性にある。ただ、お互いにとても良い人なのは共通している。

 感情性豊かな一面があり、何時も物腰柔らかな雰囲気も相まってお姉さんの様な雰囲気を醸し出していると言え、実際にお姉さんだと判明した今となってはその見方は更に強まると考えられる。千夜ちゃん程では無いが独特の感性の持ち主でもあり、甘兎庵のあの独特のメニュー名をサラッと解読してしまう程の感受性の高さも相まって千夜ちゃんからはかなり気に入られている*9。更に言えば、感受性が高いが故なのかは分からないが、よく目をキラキラさせている印象が強く、割に好奇心旺盛な一面があるのではないかと考えている。

 人間関係に関して言えば、元から新しく形成する事を諦観*10していた面も否めなかったが、夏明ちゃんとは異なり拒絶意識こそそこまで目立ってはいなかったものの、それでも今までの経緯から何時しか「自分たちの様な転校ばかりのいわばよそ者が今更親密な関係を創れるはずが無い」と心の何処かで思う様になり、且つそれを受け容れる様になっていた様で、積極的に人間関係を構築しようと頭の中で考えたとしても、それを実際に行動に移す姿は木組みの街に来るまではあまり見受けられなかった。彼女の今までの経緯を考えればそうなってしまうのも無理はないのだが、まだ10代半ばにしてその様な状態になってしまった心境は察するに余りある。だって誰だって人から好かれたいとは願うものだし、まして嫌われても良いとは思いたくないものであると言うのに、それを強引に歪ませて「自分には夏明ちゃんが居るから平気だ」とまで思わなければならなくなってしまったのだから……。しかしながら、それを木組みの街の人々が持つ温かき人情が少しずつ変えていったのは言うまでも無い。この事は、元々は普通の友達関係を普通に築きたかったであろう映月ちゃんにとってどれほど喜ばしい事なのか、その真相は彼女にしか分からないが、私には幸せそうな彼女の姿が映っていると感じている事は言っておこう。

しっかり者の妹さん

 ここからは神沙姉妹の妹である夏明ちゃんの方に焦点を当てたいと思うが、その前に書き出したい事がある。もう何度も記載している事だが、今回のお話で夏明ちゃんが妹だと判明した訳である。私はこの事実を知る前は夏明ちゃんが姉だと考えていた面があったのもご明白である。勿論夏明ちゃんが姉だと言う根拠は全く無かった上、明確に明らかになっていない姉妹関係を断定する事をするつもりも全く無かったのだが、ごちうさ好きたるもの、客観的には分からずとも考えなければ話にならないと私自身思っていたのもあったので、間違っているのも覚悟の上で予想を立てていたのである。結果は見事に見当違いであったが、こうなる事は客観的に信頼できる判断材料が何一つない中で姉妹関係を断定しようとする事が土台無理な話だった事を思えば簡単に予想出来た事だったと言えるため、どうであっても受け入れる覚悟はできていた。尤も、実際にはそんな大層な話では無いのだが、この様な経緯を踏まえて、夏明ちゃんについて思う事を改めて書き出したいと思う。

 夏明ちゃんは映月ちゃんの双子の妹であり、のんびり屋でマイペースな姉とは対照的にしっかり者且つ常識人であり、実質的に夏明ちゃんが映月ちゃんの事を引っ張っていく事もしばしば。周りに対してかなり気を張っている事が多く、強気とも高飛車とも見て取れる言動も相まってやや近寄り難い雰囲気を醸し出しているのは否めないが、これは無理に演じている面も強く、実際には割とフレンドリー且つ、優しい人柄をしている。無理をしてまで気を張っているのは、実はナイーブで傷付きやすい一面があるからなのかも知れない。また、生真面目で何事にも一生懸命な人でもあり、この事は夏明ちゃん自身あまり表に出さないが、そう言った点があるからこそ、人から信頼される理由であるとも言える。因みにかなりの熱血な一面もあり、過去にはピアノを教えて欲しいと年上のプライドを捨ててまで頼んできた理世ちゃんに対してスパルタ教育じみた形で教えた事もある*11様に、やるからにはとことんやると言うスタンスが見受けられる。

 良家のお嬢様らしく、育ちが良いと感じる一面は姉同様に見受けられるが、姉と違うのは「夏明ちゃんはお嬢様特有の振舞いを意識、理解した上で周りに振舞っている一面がある」事であり、それ故に良くも悪くもごちうさの登場人物の中でも一番お嬢様らしい振る舞いをする事が多い。但し、前述の通り本人は好きでお嬢様らしい振る舞いをしているというよりかは「自分自身を護る為に振舞っている」側面がある為、実際には大分堅苦しい思いをしているのも否めないと思われ、事実ごちうさにおいては良家のお嬢様と言う意味では理世ちゃん、神沙姉妹が該当する*12が、その中でも一番堅苦しい思いをしている様にも思えてくる。

 生真面目で常識人という事で礼儀作法にもシビアな一面があり、普段から礼儀正しい対応をする為に気を張っているのが見受けられる上、特に年上等の目上の人に対する言葉遣いにシビアで、実際に旅行編においては姉である映月ちゃんに対して、年上に対する礼儀として「年上には敬語!」と注意した事がある程で、ごちうさにおいてここまで言葉遣いに神経質なのは夏明ちゃん位*13なものである。これには育ち故に礼節には特に厳しく言われてきた経緯があると思われるのだが、その割に姉の映月ちゃんは礼節に堅苦しくなく、何時も物腰柔らかな対応を取っているので夏明ちゃん自身の性格が大きいと思われる。ただ、その一方でテンパリ屋なのが否めず、自分の事に関して図星を指される*14事を人に言われると途端に平常心を失い、慌てふためく姿がしばしば見られる。また、感情が表に出やすいタイプでもあり、同時に人に感化されやすい一面を持っており、それ故に実は傷つき易い所がある様に感じられる。更に感情性豊かな面もあり、姉程では無いがセンスに溢れている面がある。その為、夏明ちゃんは「普段は真面目で気を張っている事からやや近寄り難い雰囲気もあるが、実はナイーブでデリケートな精細な感性と心を持つ人」だと言える。つまり姉と違って決して芯が強い人間では無いのである。

 人間関係に関しては姉以上に諦観意識が強く目立っており、更に単純に人間関係を新しく形成する事を姉同様の理由から避けていただけでなく、彼女はそれに付け加えて「私は人間関係を形成する事を避けてきたから、今更人間関係を形成する事を望んではいけないし、周りもきっと受け入れてくれない」と、今までの経緯からそう考えていた面が木組みの街に来たての頃まで目立っていた。真面目な性格故に「私はずっと人間関係と向き合わずに姉の存在に逃げてきたから、他人に対して深く求める事はしてはいけない」と、自分で見切りをつけてしまっていたのであろう。確かに人間関係の在り方について真摯に考える事は悪い事では無いのだが、それでも自分で自分を更に追い込む様な考えに陥ってしまえば本末転倒なのは明白であり、それは夏明ちゃん自身も良く分かっていたと思われる。なのにその本末転倒の状態になってしまっていたのには、彼女のただならぬ心境と経験が強く関係していると言えよう。そして、木組みの街に来た当初もそのスタンスを貫こうとした姿が見受けられたのだが、旅行先で出逢った木組みの街の住人と奇跡とも言える再会を経て、彼女は大きな変化を遂げる事になった。現段階でこそその変化は微々たる様に思えてくるが、時が経てばより明確に分かってくるであろう。

 ここからはいよいよ本格的な感想・考察に入りたいと思う。今回書き出したい事は神沙姉妹に関係する事はもちろんの事、紗路ちゃんがアルバイトとして勤めているフルール・ド・ラパンにまつわる事についても考えている。それらについて自分としてはどう思ったのか、改めて率直に書き出すとする。

3.購読した感想・考察

逆転の姉妹関係

 いきなり先の内容と被る所があるものだが、神沙姉妹がまだまだ謎な一面が多い中で、姉妹関係が今月号で唐突に明らかにされた時から「本来は妹である夏明ちゃんが姉に思われ、本来は姉である映月ちゃんが妹に思われるか」と言うのは正直自分の中で大きく圧し掛かってきた。今月号の作中内でも「映月ちゃんが姉」だと思っていた人は誰一人としていなかった*15し、私としても「映月ちゃんが姉」だとは前述の通り正直思ってもみなかったからである。

 何故こうなったかと言えば、私としては「映月ちゃんがお姉ちゃんらしく思えない性質をしているから」だと考えている。先に書き出した映月ちゃんの性質を見ると、どれも表立っては姉だと一目で分かるものはない上、妹である夏明ちゃんがしっかり者と言う表立って姉っぽく思える性質をしている事も相まって余計に姉っぽく思えなくなっていると思われる現実が存在している。また、それ以上に「何時も前に出てリードしているのが夏明ちゃん」と言う事実が、映月ちゃんが姉として見られない大きな要因なのだと思えば合点がいく。更に、ごちうさにおいての「姉」と言う存在は、心愛ちゃんやモカさんに代表される様にマイペースな一面はもちながらも「皆を導く先導者の性質を併せ持つ」立ち位置である事が多く、それは必然的に積極的に誰かを引っ張ろうとする事が求められる事を意味している。その観点からも、映月ちゃんはマイペースなのは満たしているが、彼女は積極的に誰かを引っ張っていると言うより、完全に夏明ちゃんに引っ張られている現実が存在している*16事を鑑みるなら、やはり映月ちゃんが姉とは思えないとなってしまう。尤も、これらの特性も姉妹関係が正式に判明した今となっては、お姉さんでありながらそれを隠しているとも見て取れる「唯一無二の特性を持ったお姉さん」だと言えるのだろうが、それも正式に判明したからこそ言える事であり、判明していないとなれば中々「映月ちゃんが姉」とは思うに思えなかったのが私の結論だった。勿論これは私の考えであり、実際には姉妹関係が正式に判明する前から「映月ちゃんが姉」だと予測していた人は絶対にいたと思うし、確固たる意志をもって映月ちゃんが姉だと考えた人もいたとも思っている。でも私は映月ちゃんがお姉さんとは思っていなかった。この事をもし映月ちゃん本人に言ったのならば、恐らくはきらま8月号107ページ一番右下コマに描かれている「飾り目のショック顔」を私にも直接披露された事だろう。全くお恥ずかしい話である。

 しかしながら、前述の通り映月ちゃんが姉だと思っていなかったのは作中の登場人物も例外では無かった。今月号で描かれている限りでは紗路ちゃん、麻耶ちゃん、恵ちゃんは確実に映月ちゃんが姉だとは思っていなかった様で、マヤメグにその事を言われた時に前述の「飾り目をしたショック顔」を見せたのである。紗路ちゃんやマヤメグが、映月ちゃんが姉だとは思わなかった理由には、やはり神沙姉妹の普段の振る舞いと関係性があるとは思うのだが、もう一つの理由として心愛ちゃんと言う姉の存在があった可能性がある。何故なら、2年以上にかけて明るく積極的で、尚且つ皆を導く行動力も、先導者としてのセンスもある「心愛ちゃんと言う姉」を見ていれば、例えその姉の肩書きが自称であっても多かれ少なかれ影響を受けてくるものであり、事実心愛ちゃんの周りにいる大切な人達は心愛ちゃんの影響を多少なりとも受けている一面が散見*17され、特に智乃ちゃんが心愛ちゃんに触発されて今の豊かな自分自身の礎を築き上げたきっかけとなったのは最早疑いない事を慮るなら、心愛ちゃんと一緒に大切でかけがえのない時と空間を長きにわたって共にしている人達は、無意識の内に「心愛ちゃんの様な人が姉みたいな人だ」とどこか思う様になっていた可能性が私の中で浮上したのである。ただ、紗路ちゃん、マヤメグどちらにしても映月ちゃんが姉だと思わなかった要因に「心愛ちゃん」は入っていなかった上、抑々心愛ちゃんを引っ張り出して神沙姉妹の姉妹関係を推察しようとする事自体無理が否めない為、自分でも正直突拍子も無い考えだとは感じ取っているし、正直あまりにも突拍子が無さ過ぎる為、この考えは文面から消し去ろうかとも本気で考えた。しかしながら、人間の価値観は往々にして変化するものであり、特に身近にいる人から影響を受ける事が多いのが兄弟(兄妹)、姉妹関係であると私は考えている。ならば心愛ちゃんと言う姉の振る舞いが、周りの人間に多かれ少なかれ価値観の変容を引き起こしてもおかしくないと思ったのなら、自分の価値観をもって、ありのままに書き出す事に意味があると思い、消し去る事を止めて残す事にした。何が正解か分からないのが考察なら、何を思い、何を書き出すのかも自分次第。ただ只管(ひたすら)に恥ずかしい話なのだが、どうか理解して欲しい。

 この様に映月ちゃんは「彼女がお姉ちゃんらしく思われない性質をしている」事と「妹である夏明ちゃんが普段から映月ちゃんの事を先導していた」事が要因となり、私は姉とは思う事は基本的に無かったし、それは作中の大半の登場人物も同様だったと言える。尤も、映月ちゃんの事を姉だと思わなかった事実について作中の登場人物は仕方ないと思うが、私に関して言えば如何ともし難い事態である事は疑いないとは思う。しかしながら「どの様な性質を持つ人が姉だと思うのか」については人によってバラツキが生ずるのは明白であり、それに伴い「どの様な人柄を姉に相応しいか」と思うのは個人の自由と言う事にも繋がる為、そもそも「姉っぽくない性質をしているから姉とは思わない(思えない)」等と言う判断基準が誤っていた面は正直あったと思う。良く「人を見かけで判断するな」と世間では言われるが、それは姉妹関係を推し量る場合でも同じ事なのだろう。何と言うか、改めて人の特性・立場・出自を理解する事は容易では無いと思うばかりである。

 しかしながら、映月ちゃんとてお姉さんと思われる事は少なくとも、全くお姉さんらしさが無い訳では無い。こう書くと「実際にお姉さんなのだから、幾ら周りからお姉さんとは思われなくとも、お姉さんらしさが少しはあって当たり前なのでは?」となるが、映月ちゃんのそれは他の人のお姉さんらしさとは一線を画すものであり、カッコ良さすら感じてしまう程である。その様な姿は今月号で確認できるのだが、その前にフルール・ド・ラパンについて新たに分かった事を考察したい。

フルール・ド・ラパンの物語

 抑々フルール・ド・ラパンとは紗路ちゃんと麻耶ちゃんがアルバイトをしているハーブティー専門の喫茶店であり、店員さんがロップイヤーと呼ばれるうさぎの耳を模した装着品を頭の上に着けているのが特徴で、制服も喫茶店と言うよりかはメイド喫茶寄りのテイストになっている。この様なテイストになっているのは紗路ちゃん曰く「店長の趣味」だそうで、その店長さんは長らく未登場だったのだが、今月号でサラっと登場し、女の人だった事が判明している。その店長さんだが、見た目は狩手結良ちゃんを思わせる容姿をしており、雰囲気もどこか独特であるが、個人的には良い人そうだと感じ取っている。

 そんなフルール・ド・ラパン(以下、フルール)だが、今月号は中々重要な役目を担っている。抑々今月号の舞台そのものにしても中盤はフルール中心になるのだが、まずは恵ちゃんと映月ちゃんと言うのんびり且つマイペースコンビによるフルール・ド・ラパンの物語が始まる。展開としては少し悩み事を抱えている映月ちゃんを見かねて、恵ちゃんが気分転換として連れていく形となって2人でフルーツフェスタを堪能するのだが、なんと2人共財布を忘れてお金が払えなかった為に、フルールの店長から皿洗いをさせられる*18と言う、ちょっと飛んでいる内容になっている。因みにこの様な展開、漫画やアニメでは度々ある展開ではあるうえ、このごちうさにおいても店長が直々に皿洗いと言う名目で仕事をさせると言う形で描写されているが、現実においては当然ながら無銭飲食に当たり、然るべき対処を怠り支払い義務を逃れた場合、刑事罰及び民事請求を受ける可能性が発生するのでくれぐれも御注意を。また、もしその様な事態に遭遇しても当方では責任を一切負いかねるので念のため悪しからず。

 こうして2人はフルールで働く事になったのだが、今回は恵ちゃんには殆ど焦点が当たっておらず、映月ちゃんに集中的に向けられている。そんな中、思わず「ダメな子……」とボヤいた映月ちゃん*19に対して紗路ちゃんがフォローをしてあげ、少し話し合いをしている姿が存在している。だが、そのやり取りの内容が個人的には気になる所が一つあり、それは紗路ちゃんがフルールで働き始めた理由がまさかの「お会計時にお金が足りなくて皿洗いをさせられた」(実はメグエルの事を全く言えない立場だった)と言うものも衝撃的だが、それを紗路ちゃん自身が彼女特有の気品オーラ全開で映月ちゃんに打ち明けると言うのもびっくりものであった。因みに紗路ちゃんがフルールで働いている理由が明確に明かされたのもこの場面である。元々カフェイン酔いしやすい体質故にラビットハウスの様なコーヒーを専門に取り扱う喫茶店では「仕事にならないどころか、迷惑をかける事にもなる」と言った理由で、継続的な働き場所として選ばなかった事は明らかになっていた*20のだが、何故にフルールを選んだのかは明らかになっていなかった。と言うのも、紗路ちゃんがフルールで働く事になった事情を自ら秘匿(ひとく)していたからである。確かに「お金が足りなくて皿洗いさせられたのがきっかけ」とは、親しき仲であればある程言いづらい事ではあるので、言いたくない気持ちは理解は出来るのだが……、それでも親しき仲だからこそ、言った方が良い気がするのもまた事実であろう。ただ、その事をきっかけになんだかんだ2人共打ち解けつつある様な様子は見受けられるので、その点では良かったとは言えるし、抑々本人の意思を尊重する事は大原則なので、ある程度は致し方ない事だとも言える。また、紗路ちゃん本人も「秘密はいつかバレるもの」という事を経験則で解っている為か、自身の秘密を知られた事に対して「やれ見返りがどうだの、約束を反故*21にしたらどうだの」そう言う事は言わない優しい一面があり、事実映月ちゃんに対しても対価は求めておらず、助言程度に留めている。今後どうなるかは未知数だが、少なくともシャロエルはお互いに良い人同士なので、良好な関係性が築けるとは言えるだろう。

 ここからはフルールにおける映月ちゃんの「芯の強さとお姉さんらしさ」を発揮した部分を中心に考察したいと思う。

気概に溢れたお姉さんと父親

 フルールにおいて、映月ちゃんが持ち前の「芯の強さとお姉さんらしさ」を発揮したのは「フルールが神沙姉妹の父親が社長を務める喫茶店ブライトバニーによって買収される計画が検討されている事を知った時」である。買収を検討し始めた理由は「立地条件が良い事」で、ブラバの社員が何度も駆け寄り、しかも条件を釣り上げている事から立地場所として相当好条件なのが窺える。当然ながら、フルールの店長は断っているのだが、ブラバの社員とて本気なので引くに引けないと言う、所謂膠着状態になってしまっているのであった。

 この事実を知った時、映月ちゃんは結構な形相で驚いていたが、この事から神沙姉妹の父親は娘たちに喫茶店事業は殆ど教えていないのが窺い知れると私は考えている。何故ならあの時の映月ちゃんの反応は「本当に知らなかった時の反応に他ならない」と即座に感じられる程の顔つきになっていたからである。映月ちゃんは所謂ポーカーフェイスでは無く、割と思った事がはっきりと出るタイプであり、もしフルールが買収される事を知っていたのなら、あそこまでの驚きの顔を見せない筈だが、今回結構な形相で驚いていたのは「彼女が本当に知らなかった」事を示唆していると言える。ともすれば、何故に神沙姉妹の父親は「娘達に事業を殆ど教えないのか」となるが、これは抑々「事業問題は社外秘である事から、例え自分の娘であっても教える事は出来ない」と言うものや「そう言った事業を教える年では無い」といった至極真っ当な理由が考えられるため、別に特段おかしい事でもないだろう。

 尚、この買収計画に対して紗路ちゃんは割と理解を示しており、理解を示しているのはブラバの「懸命な企業努力で発展してきた会社」と言う経緯を知っているが故*22なのだが、この時「コーヒーが駄目なのにブラバの店員になりそう」だと冗談めいた事を飛ばしてもいる。この事に対して私は「仮にもフルールの店員が軽はずみに冗談を言うのでは無い」と正直思ったのだが、この様な冗談を飛ばした真意として、紗路ちゃんは今回の買収計画に対して「自分達の様な立場ではどうする事も出来ない事」と言う非情且つ冷血な現実*23を良く理解しているのが関係している可能性があるからではないかと考えている。聡明な紗路ちゃんの事なので、恐らく「買収計画はどう足掻いても避けられない運命にあるのかも知れない」事を頭の何処かでやんわりとは分かって、その上で覚悟を決めていて、それでも今までの思い出や経験がある手前、どう言い表せば良いのか分からなくなり、普段シリアスな物事に対して軽はずみな冗談を言わない紗路ちゃんが、今回冗談路線に突っ走った可能性がある。無論、紗路ちゃんもフルールは無くなって欲しくないのが本心なのだが、大切な居場所が無くなってほしくない自分の想いと、どう足掻いても買収計画は逃れられないかもしれないと言う非情な現実とで板挟みになり、どう言えばいいのか分からなくなってしまったのだろう。こう言った事になったら、誰だって路頭に迷うものである。

 そして、そんな話を聞いた映月ちゃんの心には火が点いた。もしここでフルールの買収計画を許せば、ラビットハウスや甘兎庵までもブラバの買収計画に挙げられ、それまで人との関わりを極端にまで避けてきた私達神沙姉妹にとって、やっと巡り逢えたかけがえのない人達の居場所が消滅の危機に瀕する事になる。その様な事を思ったのであろう。そして、映月ちゃんは遂に交渉現場に乗り出す事を決意する。今までののんびりマイペースだった映月ちゃんとはまるで別人とも言える、誰かの為になら大の大人相手にも怯まない芯の強さを持った、気概に溢れた性質をもって怖気る事無く切り込んでいくそして、この案件がこの場で決められないと言われれば、自分の父親と直接交渉に乗り出すと言うとんでもない提案*24をし、それを本当に実行してしまう。結果的には怒られながらも再検討してくれる事になった(つまりフルールの買収計画は一旦保留になった)と言うが、この恐るべき行動を普段マイペースでぽわぽわしている事の多い映月ちゃんがやっているのである。何と言うか、普段とのギャップもそうなのだが、まだ高校1年生なのにこんな事をやってのけてしまうとは、なんて凄い人……。

 映月ちゃんのとったこの一連の行動に対して、私としてはここで今まで書き続けていた「映月ちゃんは相当な気概を持つ、芯の強いお姉さん」と言う印象を抱いた。散々書いた事ではあるが、抑々映月ちゃんが上記の様な一連の行動をとった動機として「やっと巡り逢えたかけがえのない人達の居場所が消滅の危機に瀕する事になってしまうのは嫌」と言うのは間違いないと考えているし、その根拠も十分にある。ただ、その為に社長である父親相手に対等に物申す事を決断、実行すると言う、映月ちゃんの様な高校生はおろか、大人でもそうそうできない事*25を実行しているのがミソなのであり、そう言う意味では映月ちゃんは「高校1年生とは思えない程に芯が強く、並の大人を凌駕し得る程の気概を秘めるお姉さん」だと言っても良いと思っている。尤も、映月ちゃんとて高校1年生にしてはメンタルがかなり強い方だと思われるとは言え、鋼の如く強い訳では無いので、この行動をとった後に周りからどんな目で見られる事になるのかかなり不安視する様子が見受けられると言う、良くも悪くも年相応らしい面もあるのだが、夏明ちゃんを始めとした映月ちゃんの周りにいる人達は皆映月ちゃんの事を大切に想っているうえ、自分たちの大切な居場所でもある喫茶店が無くなってほしくないと言うのは夏明ちゃんにしても、他の皆にしても同じ事を思っている。なので、映月ちゃんとしてはこれからも心配する事無く、己が持つ素晴らしきものを存分に発揮して欲しい。

 また、フルールの買収計画を止める様に進言した映月ちゃんの事を叱りながらも買収計画を再検討すると判断をした、神沙姉妹の父親でもあるブライトバニーの社長は「人として器量の大きい人物」だと個人的には考えている。社長たるもの、事業拡大の為にあらゆる手段を尽くすのは当然だが、同時にその事業拡大により不都合が生ずると言う意見を提唱する者がいるのならば、その意見を真摯に受け止めると言うのも社長には必要な事だと私自身考えている中で、この社長さんは怒りながらも自分の娘が提唱した意見と真摯に向き合った結果を下したと言う事実は私の心に深く突き刺さった。尤も、考え様によっては「自分の娘の意見だからその様な決断をした」と言う見方も出来なくも無いが、世の中の社長さんが全員自分の娘ひいては身内の言う事を無条件に真摯に受け止めるかと言われれば、そうではないだろう。ビジネススタイルは人それぞれであり、その中には「たとえ身内の進言であっても基本的には考慮しない」と言う独善的なスタイルもあるだろうし、或いは「どんなに些細な意見であっても、意見があるからには反映させなければならない」と言う大衆に広く開かれたスタイルもあると私は考えている。ただ、一番重要なのはスタイルそのものでは無く、そのスタイルを掲げている人が「どの様な信念をもってそのスタイルを掲げているか」なのであるとも考えていて、言うならば、スタイルそのものが善し悪しを決めるのではなく、そのスタイルを扱う人がどの様な理念をもって取り扱うかで初めて善し悪しを判断できるものだとという事であり、ブライトバニーの社長がどの様なスタイルをもって懸命な企業努力の末、今の様な大企業にのし上がったのは分からないが、少なくとも「人の意見や忠告を一切合切聞き入れない」と言うスタイルは採っていない事が今回の再検討の決断から窺えると私は思っている。そう思っているからこそ、今回私がブライトバニーの社長に対して「人として器量の大きい人物」だと思えるし、それはきっと娘である神沙姉妹にも受け継がれているのだとすら思う程である。神沙姉妹とて他人に対して軽薄な事は全く無く、寧ろ「他人を深く思い遣る事のできる、優しい人」だと個人的には確信しているのだが、それも親からの好影響だと思うと、中々に興味深いと言えるだろう。

再来の日常

 この様にフルールでの一件をめぐっては大活躍だった映月ちゃんだが、一日経つとまた夏明ちゃんに引っ張られるのんびり映月ちゃんに戻ってしまう。映月ちゃんにとってはのんびりなのがある意味平常運転なのだが、如何せんギャップが大きすぎる。それが彼女の魅力と言えばそれまでだが。因みにここでの日常と言うのは今月号における最初の物語の事であり、暗に日常が繰り返される事を暗示していると言える。尤も、本当の意味での同じ日常(所謂無限ループ)が繰り返される訳では無いのはごちうさを読み込んでいる人ならすぐに分かる事だろう。

 この場面においても重要な要素がいくつかあると考えており、それは映月ちゃんが心配していた「周りからどんな目で見られるのか分からない」と言うのが、実際にはマヤメグも何も変わらず接してくれたと言う事実*26もその一つなのだが、もう一つ欠かす事のできないものとして「心愛ちゃんが映月ちゃんの事をお姉ちゃんだと直感で見抜いた事」であろう。それまでも心愛ちゃんと神沙姉妹は何度も会ってはいるのだが、心愛ちゃんが神沙姉妹の姉妹関係を知っている訳では無く、まして心愛ちゃんは神沙姉妹の姉妹関係が判明したやり取りを直接は知らない事から、本人が「同じ波長を感じたから」と語っている通り所謂直感で見抜いたと考えられる事になる訳だが、冷静に考えて直感で双子の姉妹関係を自然と見抜いてしまうのは異例な事であり、普通の人なら到底出来ない事である。これは心愛ちゃんがややもすると「実は誰も敵わない非凡な才能(鬼才*27)を持っている」事を体現しているとすら考える事が出来ると個人的には思うのだが、その事を抜きにしても「何故そんな事が可能なのか」と個人的にはなるのだが、これは心愛ちゃんが「普段から姉としての風格を心得ている事」「人の感性を読み解くのに優れている事」があるからだと考えている。

 心愛ちゃんは天才的なセンスを持ちながらも努力家としての一面も凄く、どんな苦難があっても目標の為なら簡単には折れない強い精神を兼ね備えており、それはお姉ちゃんとして皆から慕われるために努力する事でも同じ事であり、どんなに苦難があっても心愛ちゃんは全く折れる事無く、己が信じた道を突き進み続けてきた経緯を持っている。また、心愛ちゃんも流石に千夜ちゃん程では無いとは言え、人の気持ちを汲み取るのに優れており、これまで多くの人の気持ちに寄り添い、人の気持ちを良い方向に変化させてきた経緯も持っており、言うならば「人の感性、属性を汲み取る事に優れた(特に姉妹関係関連に秀でた)特性を持っている」事が読み解けるのであり、この事実こそ今回私が心愛ちゃんが姉妹関係を見抜いた理由として採用したきっかけともなっている。何とも客観的根拠に乏しい理由だとも思うのだが、私としても言ってしまえば「何故に心愛ちゃんが波長で姉妹関係を見抜けたのか、その客観的根拠なんて分かり様がない」と言い切っても良いと考えている上、それ以上に心愛ちゃんが言う感覚を信じたいと言う純粋な想いもあって、上記の様な理由を採用するに至った。

 それにしても波長から姉妹関係を見抜いてしまう程の天才的なセンス、天性の高いコミュニケーション能力、何事にも決して折れず簡単には諦めない精神的な強さ、目標のためならどんな努力も惜しまない努力家な一面、恐るべきパンへの情熱と理数系分野の驚異的な理解能力(特に暗算がずば抜けて早い)等々と、数々の並外れた能力と情熱、そして気概を持つ心愛ちゃんは一体何者なのだろうか……。これだけでも鬼才と呼ぶには十分なのだが、それでいて可愛さにも溢れ、更に教養も兼ね備えていて、人望にも溢れている。こうなれば最早鬼才と言う言葉ですら生温く思えてくる程である。尚、心愛ちゃんは以前理世ちゃんのずば抜けた能力の高さに対して「人間わざじゃないよ」と言った事があるのだが、個人的には心愛ちゃんも理世ちゃんと同じくらい……否、最早理世ちゃんを超えるまでに心愛ちゃんも十分人間離れした能力を持っていると思う。心愛ちゃんと理世ちゃんは割と合った2人だと個人的には前々から思っていたのだが、こうも才能面を見比べると……お互いに凄すぎる……。ある意味唯一無二の鬼才センスを持つお姉ちゃんコンビだと言えよう。

 勿論心愛ちゃんとて所謂完全無欠では無く、文系が苦手、マイペース故によく人を振り回す、天然でやらかしてしまう事(どちらも心愛ちゃんに悪気は一切無いのだが)がしばしばある等の短所、弱点はあるが、長けている部分があまりにも凄すぎる為、個人的には最早欠点が霞んで見えてくる。 ごちうさでは心愛ちゃんが度々女神の様に扱われる事があるが、これらを思えば私も納得する程のものであり、それは神沙姉妹にしても同じ事なのだろう。

4.あとがき

 以上がきらま2021年8月号のごちうさを読んだ私の感想である。今回遂に映月ちゃんが久々に登場しただけでなく、神沙姉妹の姉妹関係も明らかとなり、更に言えばただでさえ上質なお話のクオリティが今回は一段と高くなっており、正にごちうさの権化たるお話」だったと考えている。この事を普通は「神回」と呼ぶ事は分かっており、私としてもその凄さを「神回」だとは感じ取っており、実際にそうやって表現してみたいと思う事もあるのだが、所謂言葉遊びが好きな側面がある私は敢えて「神回」とそのまま言わずに「神回」と分かる様な代わりの表現をしたいとも考える事があり、それ故に要らぬ苦労をしているのも事実である。もっと気楽に「神回」だと言えば良いとは自分でも幾度となく思う事も多く、我ながら不器用な愛し方だと思うのだが、そんな不器用な愛し方だったからこそ見つけられた世界観も多い。尤も、その不器用な愛し方故に危うく私の中の世界観を苦悩の渦に染め上げ切りかけた事もあったのだが……。

 神沙姉妹の姉妹関係については、まさか映月ちゃんの方がお姉ちゃんだとは思わなかったのは今までも書いてきた通りだが、今月号を読み進めていくと映月ちゃんの事を「立派なお姉さん」だと思う傾向が強くなっていった。元々旅行編からの登場キャラである冬優ちゃん、神沙姉妹の3人の中でも映月ちゃんは私の中ではかなり好きな方であったのだが、今月号で映月ちゃんの様々な一面が明らかになったのは勿論のこと、今までの好きと言う感情に「お姉さん」と言う属性が加わる事で更に好きになった。因みに私が映月ちゃんの事を「お姉ちゃん」ではなく「お姉さん」と書いているのは、映月ちゃんの様なおっとり且つマイペースな性格では「お姉さん」と言うイメージの方がより似合っていると個人的に考えているからである。私としては「お姉ちゃん」か「お姉さん」で全く異なったイメージを付加させると考えた上で言い分けていて、勿論「お姉ちゃん」と呼ぶ事もあるのだが、あくまで私としては「映月ちゃんはお姉さんの方がより合っている」と言うイメージを持っている。好みの問題と言えばそれまでだが、私としては「お姉さん」と「お姉ちゃん」とでは何か違うものがあると考えているのも事実である。

 また、途中に「心愛ちゃんは一体何者なのか」と言ったスタンスで書き連ねた部分があったが、これは今月号における心愛ちゃんの特性について考えていく内に、徐々に心愛ちゃんの凄い部分に改めて心惹かれていったからである。神沙姉妹を中心に考えていく事を目的とした今回の路線方向を鑑みると、言ってしまえば完全に脱線している事になるのだが、心愛ちゃんは言うまでも無くごちうさの中心人物であり、それ故に彼女を抜きにしてごちうさを語る事は出来ないとも考えていて、今月号もかなり重要な描写がなされていたためにそう考えた次第なのである。とは言ってもその内容は「心愛ちゃんの鬼才的な才能について改めて考えてみた」とでも言うべきものであり、やっぱり少々暴走気味なのが否めないのだが、私としては心愛ちゃんが「波長から神沙姉妹の姉妹関係を見抜いた」描写を観た時から心愛ちゃんの凄さについて考える事で頭がいっぱいになり、上記の様な内容を書き出したのである。少々恥ずかしいのだが、思いをひた隠しにしても良い事なんて一つも無かった苦い思い出があるので、勢いに乗って只管(ひたすら)書き出した。やはり自分の伝えたい想いは少々恥ずかしくても伝えるのが大切なのであり、それがひいてはごちうさ好きを続けていく為の答えでもあったと、私は考えている。因みにこの文章の文量は過去3番目である。

 最後に、今回の神沙姉妹は非常に魅力的であった事と、個人的には旅行編からの新キャラである冬衣葉冬優(ふいばふゆ)ちゃん、神沙姉妹の神沙夏明(じんじゃなつめ)ちゃん、神沙映月(じんじゃえる)ちゃんの3人の中で、今月号のお話を経て神沙映月ちゃんが一番好きになった事は改めて言っておこう。ただ、映月ちゃんが一番好きだとは言っても、冬優ちゃんや夏明ちゃんの事も基本的に好きであり、その中でも少しだけ好きと言う気持ちが高いだけである。これはごちうさ全体に対しても同じ事が言えていて、私にとってごちうさと言うのは最早「好きと言うのは前提」のものである事も言っておきたいと思う。

*1:一卵性か二卵性、どちらなのかは現段階では不明。

*2:抑々異論を出そうにも、姉妹関係に対しての異論が私には思いつかない。

*3:心愛ちゃんはマイペースではあるがのんびり屋では決して無く、寧ろ溌溂(はつらつ)している部分が目立っている。心愛ちゃんの姉であるモカさんにしても確かにマイペースな一面こそあるが、やはりのんびり屋かと言えばそうではないだろう。

*4:特にマイペースな点や、朝に弱い点が心愛ちゃんと映月ちゃんでは良く似ている。実は誰よりも気概(何があっても決して折れない、諦めない心の強さ、骨太さ)に溢れる点も含めて。

*5:これに関しては、後述するブライトバニーの会社発展の経緯が大きいと言える。

*6:特に妹の夏明ちゃんが困惑させられる事が多い。

*7:嫌に思わない。ためらない。

*8:何があっても決して折れない、諦めない心の強さ、骨太さ。

*9:これをもってして、恵ちゃんからは「甘兎庵としての自分の立場が危うくなる」と、センスの良い映月ちゃんに対してある種の危機意識を持たれている。ただ、映月ちゃんは人を貶めようとは絶対にしない人なので、大丈夫だとは思うのだが。

*10:諦めをもって物事を見据える事。

*11:但し、これにはかつて夏明ちゃん自身が習っていたピアノの先生の指導方法が厳しかった事が関係している可能性が非常に高い。

*12:他にも狩手結良ちゃんが該当する可能性があるが、はっきりとした描写がないため、現時点では断定不能

*13:理世ちゃんも大人組と同級生の結良ちゃんを除いては一番の年長者故に言葉遣いにはそれなりに厳しい一面があるが、その厳しい一面がどうも一般常識とは少しズレている点(本人に悪気は無いのだが……)がある上、たとえ少しズレている点を抜きにしても、理世ちゃん自身が言葉遣いや礼節に関して「お互いに気持ち良く過ごせれば必ずしも定型に拘る事は無い」と柔軟且つ寛容に捉えている面がある為、夏明ちゃんには遠く及ばない。夏明ちゃんにしても少々杓子定規が過ぎる節があるとも言えるが……。

*14:一般的には「図星」と言われるものである。

*15:紗路ちゃんも「夏明ちゃんが姉」だと考えている発言をしていたし、マヤメグも同様。ただ、映月ちゃんも映月ちゃんで戸惑いこそしたが、それを真っ向から否定する発言は一切しなかった。

*16:実際には映月ちゃんも人を引っ張る力は十分持っているのだが、如何せんそれを発揮する事が映月ちゃんの場合殆どない。

*17:特に一緒に居る時間が長い智乃ちゃんと理世ちゃんが顕著。

*18:厳密に言えば皿洗いをしたのは映月ちゃんであり、恵ちゃんはホールを任されている。

*19:因みに妹である夏明ちゃんも「映月ちゃんよりピアノを先に辞めてしまった事」を引き合いに出して「ダメな子」だと自認した事がある。双子の姉妹、似た者同士と言えばそれまでだが、これは暗に2人共「自己肯定感が低い事」を示している可能性がある事を思うと、決して軽視する事は出来ないであろう。

*20:ただ、甘兎庵はコーヒー専門店では無いので、候補としてもあってもおかしくはない筈なのだが、紗路ちゃんは甘兎庵で働きたいとも考えていない模様。一見変に思えるが、その理由として「千夜ちゃんにそこまで頼りすぎるのも良くない」と、紗路ちゃん自身が考えている可能性が考えられる。抑々紗路ちゃんが甘兎庵で一緒に暮らさないのも、千夜ちゃんに甘えすぎる自分が居る事を自分自身で解っているのが理由として存在しており、紗路ちゃんとしては何時もお店の為に頑張っている千夜ちゃんに負けない様な幼なじみで居たいと言う想いがあるのだろう。

*21:ほご。約束をはじめから無かった事にすること。

*22:ブラバの社長令嬢である映月ちゃんが居た事も理由の一つの可能性もあるが。

*23:現実においても買収計画と言うのは、アルバイト・パート等の所謂非正規雇用者はおろか、そうそうたる位を持つ正規雇用者であったとしても、物言いはそう簡単には出来るものでは無い。

*24:この提案に対して紗路ちゃんと恵ちゃんは、映月ちゃんもとい神沙姉妹が実はブラバの社長令嬢だった事に驚いていた。

*25:現に映月ちゃんの双子の妹の夏明ちゃんは「もし私がその場にいたら出来なかったかも知れない」と映月ちゃんに語っている。

*26:他にも紗路ちゃんも優しく接していたことが分かる描写もある上、他の人にしても映月ちゃんの事を敬遠する事にはならないだろう。

*27:この世のものとは思えない、人間離れした才能のこと。