コミック百合姫にて「ささやくように恋を唄う」という作品がある。所謂「百合作品」若しくは「GL作品」と呼ばれるもので、王道路線をゆく展開の数々と圧倒的な表現美、そして「繊細な心理描写」を持つ、コミック百合姫ひいては「百合マンガ」の中でも人気の高い作品でもある。要素は「ガールズバンド」及び「学園百合」と言った所で、同じ高校で紡がれる恋路模様と、バンド要素が上手く融合されているのも特徴的。
そんなささ恋に登場する「泉志帆」(いずみしほ)と言うキャラクターに、私は幾度となく心を引っ掻き回され続けてきた。ある時は「嫌いにはなりたくない.....」と思い、またある時は「志帆の『不必要に他人を嗾ける所』が本当に受け付けない!」と思い、今となっては「志帆のそういった『人間』な部分に私は心惹かれたんだ......!」となっている。
「人間」味溢れる志帆
志帆の事を簡単に説明すると、彼女は「ローレライ」と言うバンドのギターボーカルにして、嘗ては「SSGIRLS」のメンバーだった人物。学年は「木野(きの)ひまり」の恋人「朝凪依(あさなぎより)」達と同じ「高校3年生」であり、学校も同じ。故に「SSGIRLS」の面々とは一種の因縁がある一方、依とは関わりが無く、関わり始めたのは依が「SSGIRLSで活動を始めた辺りから」である。依が「SSを抜けた自分の穴埋め」として参入した事から、依を一方的に敵視しているが、一方的な当て擦りでしかない為、当の依は困惑している。
飽くなき上昇志向と極端とも言えるストイックな精神を持ち合わせ、自分が打ち込んでいる事に対しては一切の妥協を許さず、そのストイックさを仲間内にも求める厳しさを持つ。その性格故に仲間内での衝突も多く、自分の矜持を絶対曲げない頑固な面も相まって、ローレライ及びSSGIRLSに所属する前は、どこのコミュニティにも馴染み切れず、半ば「厄介者」のレッテルを貼られる形で追いやられ、部活内のコミュニティを転々とする(させられる)苦難苦闘を味わった事もある。その一方で、見知らぬ他人と打ち解けるのが上手く、出逢って日が浅い相手に対しても物怖じする事なく話しかけたり、年上年下関係なくタメ口をきく事を進言してきたりと、実はフレンドリー且つ面倒見の良い人。故に同じローレライの始(はじめ)から「打ち解けるのは早い」と、暗に「親密な形での人間関係の構築及び維持が不器用」だと言及された事がある。
普段は冷静沈着な立ち振る舞いをしており、客観的な立場から理知的に物を言う事が多いが、その態度はどこか冷淡。率直ながらも辛辣な意見を飛ばす事も多く、良くも悪くも遠慮しない物言いが出来るタイプだと言えるが、人となりを知らない人には「嫌な事さえもズケズケ言ってくる怖い人」と誤解されかねないリスクがある為、結果的に「謂れも無い損を被りやすい性格」とも言える。
何かと感情的になり易い激情的な面があり、誤解を恐れないハッキリとした物言いも相まって「下手に敵を多く作ってしまいがち」なのが難点。感情任せに余計な事を言って状況を更に悪化させたり、より最悪な方向性へと問題を拗らせてしまったり、言い過ぎた挙句に相手の逆鱗に触れてしまう事も多い。更に「頑固」である事が災いして、結果的に「一旦引いて考え直す」と言う選択肢を断つ決断をする事も多く、これもまた「拗らせをより酷くさせる原因」となってしまっている。
元々は自由な演奏を持ち味としたヴァイオリニストであり、腕前も相応に凄いものだったが、ある事をきっかけに「世の中には、努力では越えられない壁がある事」を知って完全に挫折した過去を持ち、失意の中でふと出逢った「ギター」によって、所謂バンド活動に身を投じた経緯を持つ。また、ギターを手に取ったのにはもう一つ理由があり、それは「今は亡きライバルであり良き仲間の遺志」にある。この為、バンド活動に対する志の高さはすさまじく、プロを目指すのは勿論の事、他の誰にも負けない「圧倒的なバンド」になる事を目標としている。
SSGIRLSに所属していた当時、同じSSのベースたる「水口亜季(みずぐちあき)」に好意を寄せていたが、その想いはひた隠しにしていた。とは言え、亜季との仲は良好そのもので、性格こそ真面目でストイックな志帆と、飄然とした亜季とで全く異なっていたものの、だからこそ仲が良かったとも言える。だが、ある時志帆は亜季が当時SSのメンバーでは無かった「朝凪依」に好意を寄せている事を知ってしまい、結果的に志帆の初恋が実る事は「この時点では」無いものとなってしまった。この時点ではと書くのは、その後この2人の関係性には重大な変化が訪れるからなのだが、ここでは敢えて伏せておこう。
何れにしても、亜季の好意が自分に向いていない事を知った志帆は、亜季に対する当たりを何かと強めていき、またSS自体も決してハイレベルとは言えなかった事から、徐々に2つの意味(自身の理念とは程遠い現実、叶わぬ恋路)でフラストレーションを溜め込んでいく。最終的にはSSの方針に対する考え方の違いを発端としたケンカから「SSGIRLS脱退」と言う最悪の結果にまでつながってしまい、後に志帆は「里宮百々花(さとみやももか)」と「天沢始(あまさわはじめ)」の3人で「ローレライ」を結成する事になり、志帆はSSGIRLS(特に亜季)の事を一方的に仇敵と見做す様になってしまう。
以上が志帆の簡単な説明。ここではあくまで「私から見た泉志帆」なので、見る人が見たら「ここはそうじゃない!」とか思いそうだが、悪しからず。
志帆に対する感情の数々
冒頭の題目に半ば回帰する形にはなるが、この様な性格と経緯を持つ泉志帆によって、私の心はめちゃくちゃに振り回された。その威力たるや、ささ恋の事を思うと、何かと「泉志帆」に絡めたものの考え方をしてしまう程だが、ささ恋を知った当初は志帆の事が正直そこまで好きでは無かったし、ハッキリ言うと「嫌いな所はマジで嫌い」とすら思っていた。
その嫌いな所とは、態々言わなくてもいいのに、SSGIRLSの事を普通に「侮辱」する様な発言を何かと飛ばしたり、それに付随して、いくら因縁のある奴が所属するバンド相手と言っても、何かと「相手へのリスペクトに欠ける態度を鬱陶しい形で取る所」で、原作を読んでいる時もこの手のシーンは「本当に不愉快極まりない」と、腹に据えかねる思いをもっていたが、アニメでそれを見た時は、我慢ならずに一瞬で頭に血が上って激高、即座に「おい、そういう所だぞ泉志帆!!」と、ガチでキレてしまった程。後者に関しては、後に「何であそこまでキレたんだろう.....」と、激しい自己嫌悪に陥る事になるのだが、それだけそういう無神経極まりない行動に立腹したという事である。
ただ、そういった「嫌い」と言う感情を志帆にぶつける一方、彼女が持つ「飽くなき上昇志向」や「一切の妥協を許さないストイックな姿勢」については純粋に「好き」だったし「純粋な憧れの対象」でもあった。尤も、その様な姿勢が「不器用過ぎる立ち振る舞い」や、前述の「嫌いと思う行動の数々」にも繋がっている事を思うと少々複雑な気持ちになるが、それでも私は志帆が持つその「音楽に対してどこまでもストイックな姿勢」に「誇り高きもの」を感じたし、現状に決して満足せず、やるからにはどこまでも登ってやると言わんばかりの高い上昇志向も、プロを目指す者としての確かなる「矜持」を感じたものだった。
こうした「嫌い」と「好き」が私の中でぶつかり合った結果、少し前まで私は泉志帆の事を「好きとも嫌いとも言えない」と言う感情を燻らせていた。ハッキリ言ってこれこそ「エゴ」だし、煮え切らない事をして「優柔不断で決断力のない奴」と思われても仕方ないが、私には「好き」か「嫌い」かという対比表現では決め切れなかった。だって、私の中での泉志帆はいわば「好きと嫌いがもの凄い勢いで拮抗している状態」であり、そんな状態でどっちか一方の感情だけの抽出したら、間違いなく自分の中での「気持ちの均衡が崩壊する」と解っていたから。故に出来なかった。自分の気持ちが壊れるのが怖かった。
でも、今振り返るとハッキリ解る事がある。それはこの様な対比する2つの気持ちを燻らせていた時点で、私は既に「泉志帆」に対して興味津々だったという事。これだけ「嫌い」と連呼しておいて何だそれと言われそうだが、俗に言う「好きの反対は無関心」とはよく言ったもので、好きも嫌いも結局は「相手の事を知る事によって初めて生まれる感情」なので、生まれた感情が「好き」か「嫌い」のどちらであっても、それはもう「相手の事に興味があるという証明」である事を思えば、少なくとも「泉志帆のこういう所が気に喰わない!」と思った時点で、ある意味彼女に興味を持っていたと言えるのだろう。
なんだか奇妙な話ではあるが、本当に心底嫌な奴相手ならまず「己の記憶から消そうとする」だろうし、私の性格的に「そんな心底嫌な奴相手に『嫌い』と言う感情を抱くのすら腹立たしい」と思うので、嫌いとは思ってもそういった感情は抱かなかった「泉志帆」は、やっぱり「嫌いな所はあっても嫌な奴とは思いたくなかった」のだと思う。尤も「嫌な奴」とは思わずとも「めちゃくちゃめんどくさい奴」とは思うし、それをして「そのめんどくさい気質を解っているんなら、自分でもちょっとは何とかしようとしろよ.....」と言いたくなる事もあるが......。
私は原作マンガを読んでいる時から泉志帆の事がとかく気になっていた訳だが、その際に意識していたのは、とにかく「泉志帆に対する感情を『嫌な奴』と言うので絶対に終わらせたくなかった」と言うものだった。当時から何となくでも勘付いていたが、志帆は「相手に対して挑発したり居丈高な発言をしたり時、相手を傷付けさせようとして本当は自分が一番傷付いている」と解る場面が多く、それをして「志帆があんな執拗にSSや亜季に対して、何かと嫌味な事を言うのには訳がある」と思い*1、その真相が解る場面は勿論の事、志帆がずっとその想いを燻らせていた「亜季」との再びの対峙、そしてその対峙の行き着く所までを見届けようと思い、当時最新巻だった単行本8巻*2までを読み切り、そしてそこから毎月キッチリ買い続けていた「コミック百合姫」を、単行本8巻以降の範囲からささ恋掲載の部分を読み、その顛末をちゃんと見届けた。
そうして見届けた結果から書こう。マジで「見届けて良かった......」と言うのに尽きる。具体的な事についてはアニメの事もあるので敢えてぼかしておくが、とにかく「アキ志帆」の2人があまりにも素晴らしかったし、マンガの描写は圧巻的な展開の連続だし、間違いなく「圧倒的な神回」だったと言える。本当、これまで単行本5巻近くにわたって燻り続けていた想いが漸く解放された時の喜びはひとしおだった。これは間違いなく言える。
また、そうやってある程度の所まで見届けたお陰で、志帆の本心や葛藤、そして「嫌味な奴なら絶対に抱かないであろう繊細な感情の数々」にも触れられて、志帆が「相手の事を理由なく攻撃する嫌味な奴ではない事の証明」が自分の中で出来たのも良かった。やっぱり「客観的な形での証明」は大事。それがある事で、多少心がぐらつく事があっても、あの時の志帆はこうしたから絶対に大丈夫と言う「信頼」によって、志帆に対する想いを曲げずに済むのだから。
熱き想いを秘めし真理
ローレライにおける一番好きなメンバーが誰かと言えば、それは最早「泉志帆」で間違いない。では「SSGIRLS」の方はと言うと、SSのドラム担当たる「筒井真理(つついまり)」その人。とは言え、志帆と違ってささ恋を読み始めた当初からと言うより、時間をかけてじわじわと好きになっていったというクチだが、それ故に「好きという気持ちの強さ」はそれなりに強い。
彼女は「SSGIRLS」のドラム担当で、学年は依達と同じ高校3年生だが、小柄な人である為、初対面の人からは学年を間違われる事もある。人の事を「朝凪依」だの「泉志帆」だのフルネームで呼ぶ傾向がある。所謂「良家のお嬢様」であり、それなりに「お嬢様」である事を窺わせる描写もしばしばあるが、基本的にそれを鼻にかける事は無く、あくまで普通に高校生活を送っている。
SSGIRLSメンバーの中でも冷静沈着で、感情の起伏を表に出す事があまりなく、出しても微小なケースが殆ど。自分の意見はちゃんと持っているが、それを無理に押し通す事もしない為、他者と衝突する事が殆ど無く、自分を絶対に曲げないが故に他者とよく衝突する泉志帆とは「似て非なるタイプ」でもある。メンバーの中では一番小柄だが、その「度胸強さ」はピカイチであり、普段は楽観的な亜季でも多少なりとも緊張している局面でさえも、真理は一切自信をぐらつかせる様子を見せず、逆に溢れんばかりの自信を見せ付けている程。意外と「負けず嫌い」な部分もあり、ローレライとの対決を筆頭に「やるからには相手に勝ちたい」という熱血な一面も秘かに持つ。
何事にも淡々とした口調と態度を取る一方、ひまりと依の恋路模様をリサーチしようとしたり、真新しい事があるとなんだかんだ言って聞き出そうとしたり、三度その真新しい体験をしようと行動に移したりしようする等、実は好奇心旺盛。また、淡々とした態度を取るのが基本とは言っても、言葉の端々に「相手を慮っていると感じ取れる」のも多く、根は冷たい人なんかではない思いやりのある人なのが良く解る。
同じSSGIRLSのキーボード担当にして同級生の「橘香織(たちばなかおり)」に大変に可愛がられており、香織からは「まーちゃん」と呼ばれている*3。香織の真理に対する愛情は凄まじく、SSGIRLSの活動中も含めて普段から何時も2人一緒に行動を共にしたり、ことある毎に「自分は真理ちゃんが好きである事」を本人めがけて直接伝えたりする程。当の真理本人は、冷静沈着且つ感情の起伏が小さい気質らしく、淡々とした口調であっさり済ませる事が多く、時には軽くあしらう事もしばしばだが、本気で嫌悪している訳では一切なく、寧ろきちんと受け止めている。
アニメの事もあるので細かくは書かないが、実は真理としても自分の事を「好き」と言ってくれる香織に対して特別な感情を持っており、普段は表立って見せないが、たまにボソッと「本当の想い」を本人に向けて言う時もある。これに関しては「普段の2人の関係性をよく見れば自ずと解ってくる」と言うか、普段から自分の事を可愛がる香織に対して、なんだかんだ言って結局は嫌がっていない真理の様子や、真理が時折見せる「香織への本心」を汲み取れば、まるで「パズルのピースがハマっていく様に解る、2人の関係性に存在する『想い合い』」が見て取れるので、個人的にはそういう真理ちゃんも好き。
時を経て好きになった気持ち
良くも悪くもインパクトのある性格の持ち主故に、ささ恋を本格的に知った早い段階から「あらゆる気持ち」が渦巻いていた泉志帆とは異なり、筒井真理の方は本当「ゆっくりと『好き』と言う想いを構築した」と言うか、最初からフルスロットルと言う訳では無かったが、時を経てその「良さ」と「特性」が身に染みて解る様になり、何時しかそれが「好き」という気持ちの源流となったという感じだった。
こんな事を書くのは違うかも知れないが、私が筒井真理を好きになったのは、間違いなく「泉志帆」と性格面や言動で共通点があったからで、冷静沈着な部分、実は人当たりの良い所等々がそれに該当する。とは言え、最終的な印象としては「意外な一面が良いと思う筒井真理」と「意外な一面があっても、結局は気難しい印象が拭えない泉志帆」に分かれてしまうのだが、これは単純に志帆が他人と何かと衝突する機会が圧倒的に多いからで、もし衝突が少なければ、真理と同じ様な好印象になるのだが、そう解っていてもできないのが「人間」なんだよね......。
筒井真理を好きになっていく上で、彼女の「良さ」と「特性」が重要要素として機能した訳だが、良さについては「淡々として実は仲間思いで優しい」という部分、特性については「冷静沈着でいて実は結構な熱血」という部分である。これはどちらも「私が好きな性格タイプ」であり、普段は冷静でいて、心の中に秘めたる情熱を持っているとか、淡々とした様な反応を見せる事が大半な中で、たまに見せる「本心」が凄く相手を思うものと解る、と言ったものが凄く良いと思うタチなのだ。
この様な事から、筒井真理を好きになったのは、私が好きになり易いキャラの性格タイプを鑑みればある意味「必然」とも言える。にもかかわらず、作品を知ってから真理を好きになるのにタイムラグがあったのは、私と言う人間は「このキャラの○○が好き」なり「この作品の○○が良い」と気付くのは早くても、それが何故好きなのかを「心から理解するのに時間が掛かるから」である。厄介な性質と言えばそうだが、そんなんでも最終的には「自分の中での『好き』」を確立できて来たのだから、結果的に良いという話。
ささ恋をめぐって語りたい事あれこれ
SSGIRLSは「朝凪依の『ギターボーカル』、水口亜季の『ベース』、筒井真理の『ドラムス』、橘香織の『キーボード』」の4人編成、ローレライは「泉志帆の『ギターボーカル』、里宮百々花の『ベース』、天沢始の『ドラムス』」の3人編成な訳だが、個人的には「キーボード」がいるSSGIRLSの楽曲の方が好きになり易い傾向にあると思う。尤も、当記事執筆当時はまだ「それぞれの楽曲を軽く試聴した段階でしかない」のだが、私自身後述する様に「ピアノの音色が元々好き」で、それに付随する形で「キーボード」がいるバンドや楽曲を好む傾向を持つので、自分の好きになる傾向を鑑みれば、自ずと答えは見えてくるというやつである。
試聴した印象としては、SSGIRLSが「明るくオシャレなサウンドを特徴としたバンド」で、ローレライが「重厚感あふれる音色とテクニカルな演奏技術を持ち味としたバンド」と言う感じ。尚、両バンドにはキーボードの有無の違い、編成規模の違いがある上、最終的には「好みの問題」*4がつきまとってくるので、個人的には単純な「演奏技術の差」だけでは、どちらのバンドが上なのかを決めるのは不可能だと思っており、なんなら作中では「勝負事」故に仕方ないが、本来はその編成規模の違いや、キーボードの有無による表現性の差、何より「バンドとして目指す方向性の違い」から、無理に争っても仕方ないとすら思う事もある。
バンドをめぐっては何かと「ベースが一番ヤバい」と世の中一般に言われる事があり、実際に「ベース担当がバンドメンバーの中でも破天荒(或いは破滅的)な人生を送った」と言うケースは、私が知っている中でもピストルズ*5の「シド・ヴィシャス」*6や、ラモーンズ*7の「ディー・ディー・ラモーン」等が挙げられるが、ことささ恋においては、SSの水口亜季及びローレライの里宮百々花共にちゃんとしているので、嘘抜きで「ベースがまともなのが良いね」とか思っている。
正直「ベースがセオリー通りのめちゃくちゃさ加減」だったとしても、それはそれで面白かったとは思うが、世にいう「ベースが一番ヤバい」と言うのは、冗談抜きで「普通にダメな事」が山ほど出てくるし、最終的には「些細な『ダメ』なら、最早無理矢理にでも『気にしない』という事にしないとやってられない」とまでなるので、やっぱり亜季ちゃんと百々花ちゃんはまともで良かったと本気で思う。
私自身所謂「リズム隊」(ベース、ドラムスの事)が奏でる音色が大好きで、特にドラムスの音色及びビートの刻みぶりが癖になる事が多い。ただ、それに匹敵若しくは凌駕する程好きなのが「キーボード」であり、これは元々クラシック音楽好きとしての感性を磨く過程の中で「ピアノ」を特に好むのが多かった事が、そのままバンドサウンドにおいても表れている格好*8。この影響でキーボードのいないローレライよりも、キーボードのいるSSGIRLSの方が「自分の中での『好き』」を満たしてくれる可能性が必然的に高くなる訳だが、私としてはローレライの「重厚且つテクニカルなサウンドも大好き」なので、実際の所好きになる為の差異は殆どない。
この様な楽器の好みも「キャラの好きを構築していく過程」において少なくない影響があり、私がSSGIRLSの中でも「筒井真理」が最も好きになったのも、彼女が「ドラムス担当」である事も一因として存在している。また、その真理と距離が極めて近い橘香織に関しても、香織が「キーボード担当」な事もあって、SSGIRLSの中でも実はかなりお気に入り。
何かと泉志帆に対して感情的になりがちな私だが、今思えばそれは泉志帆を通じて「自分で凄く気にしている自分の『悪い所』『直すべき所』を見ている様な気分になるから」だと思ってやまない。要は「鏡合わせ」と言う訳で、志帆の「何かと感情的になり易い部分」とか「本心を誤魔化す為に変な虚勢を張る部分」とか、それに「思い込みと決めつけが激しい部分」とか、そういった部分がそのまま、自分でもかなり気にしている自分の「良くない部分」と重なるものがある。そして、自分としてはそういう「良くない部分」を自分で強く嫌っている上、その「良くない部分」は客観的に見ても良くないと思わざるを得ないものがある為、結果的に志帆に対しても「そういう一面は本当に良くないぞ!」となって、思わず怒ってしまうのである。
何と言うか「共感出来るからこそ怒ってしまう」と言っている様で、こんな自分が「身勝手」だの「打算だらけの醜い正義感」と思う事もあるが、人間と言うのは多分「そういうもの」で、どうやってもその様な「エゴ」や「矛盾」から逃れられない生き物なんだと思う。実際、志帆だって、客観的に見れば「エゴ」だの「矛盾」だの言われる行動を多く取っているし、それこそ「SSGIRLSに対する嗾け」だって、志帆は既に「SSGIRLS」を去り、「ローレライ」として新たな門出を歩んでいる以上、本来ならばそんな嗾けを仕掛ける必要性は正直ないのに、彼女は何かと因縁をつけて嗾ける事をやっていたので、そこにはやっぱり「SSGIRLS」もとい「水口亜季」に対して「簡単には割り切れない想い」があるから、「SSGIRLS」を抜ける形で因縁を断ち切った筈なのに、何時まで経っても捨て切れない想いに囚われてしまうと言う意味で、志帆が持つ「矛盾」や「エゴ」があると思っている。とどのつまり「志帆はどうやってもドライになり切れない人」という事である。
でも、結局はそういう「人間らしい部分」を愛そうと思っているからこそ、あれだけ「泉志帆」に対してとやかく言う事があっても、最後はちゃんと「泉志帆と言う『人間』が大好き」だと思える。結局の所私も「矛盾」と「エゴ」にまみれた「人間」である事に変わりはないし、それを自覚しているからこそ、そんな「矛盾」や「エゴ」さえも受け容れようとなる。
志帆の基調カラーは「紫色」だと私は思っているのだが、奇妙な事に私は「紫色若しくはそれに近い色を基調としたキャラに強く心惹かれる傾向」があり、キラキラ☆プリキュアアラモード(2017~2018)の「琴爪ゆかり」、HUGっと!プリキュア(2018~2019)の「ルールー・アムール」、スター☆トゥインクルプリキュア(2019~2020)の「香久矢まどか」等々がそれに当たる。何故そうなるかは自分でも全く分からないが、紫色は昔から「高貴な色」とされており、かの「冠位十二階」においても、最高位の色は「紫」とされた程*9なので、そのイメージカラーに相応しい「気高さ」なり「凛々しさ」なりに心惹かれるからだと思われる。
朝凪依の恋人にしてローレライのマネージャーを務める「木野ひまり」だが、彼女の本当に凄い所は「純真たる想いをもった行動が出来る所」だと思っており、結果的には失敗に終わったが、かの「試食会」がその最たる例の1つと見ている。
あの時ひまりちゃんは、ただ純粋に「SSGIRLSとローレライがギスギスせずに仲良くなれば良い」と言う想いをもって、あの試食会を開いた訳だが、普通に考えると、そんな事をするならどこかしら「打算」が入るものであり、また抑々「そういった形で仲を取り持とうとする事」さえ、人によってはやりたがらない事さえ考えられる。その中で、ひまりちゃんはただ純粋に「仲良くして欲しいから」という一心であんな事をやった。それがあまりにも凄いと思ってやまない。こんな「矛盾」と「エゴ」を抱えた人間には眩し過ぎると思う程に。
だからと言う訳では無いが、ひまりちゃんには何時までも「矛盾」と「エゴ」に心を淀ませないで欲しいと思ってしまう。これこそ正に「私の『エゴ』」なのは解っているが、一度その様な要素に心を淀ませてしまうと、当然淀ませる前の自分には戻れないどころか、心に「大きな闇」を抱える事にもなってしまうので、その「怖さ」を知っているからこその思想でもある。
色んな事を書き連ねていたら、いつの間にか400字詰め原稿用紙のべ「28枚分」になるまで内容が肥大化したが、それだけ私の中で「ささ恋」に対する想いが強いという事なのだろう。それならば、この想いがこの先も続いていく事を願って......。
*1:無論、同時に「自分が傷付くなら嫌味なんて言わない方が良いのに......」とも思ったが。それが出来るならあれ程の苦労は要らないだろう。
*2:2024年7月上旬現在は9巻が最新、同7月末には10巻及びアンソロジーコミックの発売も決定している。
*3:因みに香織は泉志帆の事を「しほほん」と呼んでいる。
*4:それこそ「キーボード」がある方が良いとか、それともない方が良いとか、SSの様な「明るいサウンドポップ」が良いとか、ローレライの様な「重厚感あふれるヘビーなサウンド」が良いのか等々。
*5:イギリスを代表するパンクバンドであり、俗に言うロンドン・パンクの中でも「ザ・クラッシュ」「ダムド」等と並んで一二を争う知名度及び影響力を持つ。因みにピストルズは所謂「通称」である。
*6:「パンク」を代表するロッカーの1人で、その破滅的且つ波乱万丈な生き様は今でも伝説級。
*7:ニューヨーク・パンクの代表的存在であり、パンクムーブメントを生み出した草分け的存在。因みにロンドン・パンクよりもニューヨーク・パンクの方が僅かに古い。
*8:ただ、そう言いつつオーケストラ編成の中で最も好きな楽器の音色は「オーボエ」なのだが。
*9:逆に最も位が低い色は「黒」とされている。