多趣味で生きる者の雑記帳

現在は主にごちうさに対する想いについて書いています。

きらま2023年4月号掲載のごちうさ、単行本11巻の感想・考察

 こんにちは。色々なマンガを追いかけると言うのは楽しいもので、ごちうさと同じきらまだと「ななどなどなど」や「瑠東さんには敵いません!」が最近特にお気に入りなマンガであり、新連載では「性別不明な殺し屋さんがカワイすぎる。」と言う作品が凄く気に入っています。また、今月からウルトラジャンプにて遂にジョジョ9部の連載が始まったので、ウルジャンがきらまと同じ2月17日発売だった事も相まって、きらまと並行してずっと「遂にジョジョ9部が始まった!是非読んでみたい!」となっていました。尤も、9部は8部までを読了した後、単行本から読み始めようと考えているので、実際に読むのは結構先な話となりそうです......。楽しみが増えると言う意味では良いですけど。

 さて、今回はまんがタイムきららMAX2023年4月号掲載のごちうさの感想・考察と、2月22日に発売される単行本11巻の感想・考察を書きたいと思います。何故この様な構成をとるのかと言えば、きらま発売から単行本11巻の発売のスパンが5日間と短い為、同一の記事としてまとめた方が良いと判断したからであり、故に記事が完成するのは2月終わり頃となりそう*1ですが、個人的にはこの方が良いと考えています。記事の内容的にもそこまで膨れ上がる事は無いでしょうし。

 尚、今回の記事は2本立てとなっており、前半にきらま2023年4月号掲載のごちうさの感想・考察、後半に単行本11巻の感想・考察と、基本的に前後半で書く内容を完全に分けようと考えています。また、単行本11巻の方に関しては、感想・考察と言うより感想中心の構成になると思いますが、元々きらまにてさんざんっぱら感想・考察を記事にて書いている身なので、単行本ではゆったりした感触にまとめる位が丁度良いと言う事でどうかご勘弁を。以前単行本10巻のブログ記事を書いた時、想定していたより妙に内容が多くなってしまった過去もあるので......。

 

※注意※

最新話及び原作単行本11巻のネタバレを含むものなので、その辺りをご了解お願い致します。また、ここで書き出した推察や考察は個人的な見解です。

そして、単行本11巻の収録範囲を確認した所、きらま2023年2月号掲載話からは単行本12巻範囲にあたるようなので、ここで書き出す4月号掲載のごちうさ感想・考察は、単行本11巻以降のネタバレになっている事もご留意ください。

1.ごちうさ最新話の感想・考察

 今回のお話は主に「腹話術」が深く関わっている構成をしており、腹話術と言えばおじいちゃんがいた頃のティッピーを思い浮かべるが、今月号ではその事に関しては直接的には触れられていない。しかしながら、おじいちゃんがサキさんに導かれた事と関係がある雰囲気は感じられる内容になっており、その意味で今までとの繋がりが色濃く描かれている。また、お話の内容も「優しさ」「思いやり」そして「信頼できる人がいる事の温かみ」を深く感じさせるものであり、ごちうさが持つ「賛美」が色濃く表れていると感じる。

 今月の扉絵は、白色のうさぎをイメージした被り物を着た理世ちゃんと、黒色の猫をイメージした被り物を着た冬優ちゃんが、2人してそれぞれ腹話術に用いるであろう人形を片手にはめ、仲良くポージングを決めていると言うもので、これは今月号にてそれまで2人だけで絡んだ経験がそこまで無かった理世ちゃんと冬優ちゃんが、2人で一緒に何かをする事(腹話術)の示唆とも言え、実際に今月号(特に前半)はリゼフユが結構色濃く描かれているので、お話にも合ったとても上質な扉絵だと思う。後、純粋に2人共可愛いのもポイントである。

 今月号は先月号と同様「新生ティッピーになってからの日常回」と言う立ち位置にある印象が強く、その中でも特に「優しさ」や「思いやり」等のごちうさが持つ美しさ」が色濃く描かれているのが印象的である。また、今月号は理世ちゃんが凄く良い立ち振る舞いを見せる場面が多く、皆より一つ上の年上として、厳しくも優しい一面を持つ者として、彼女が持つ「優しさ」と「強さ」には大きく魅せられたものがあり、今回もそんな輝かしい内容をゆったりマイペースに綴っていきたいと思う。

 

今月号の内容に対する感想・考察

 今回も「今月号の内容の中で特に深掘りしたいと思った内容」から書き出していきたい。今回は色々な意味で美しいと思う内容が盛り沢山だったが、それを書き出していくのも中々に楽しいし、なんだか嬉しくも思うものである。

腹話術から繋がる関係と運命

 まずは今月号の中でも特に存在感を発揮していた「腹話術」について、リゼフユの深まる交友関係と絡めながら考察してみたい。抑々腹話術と言えば智乃ちゃんがダンディーな声を発するティッピーの事を「腹話術」と説明した事から始まったものであり、本来はティッピーに乗り移ったおじいちゃんが自ら意思をもって発していたのは、ティッピーの正体を知る者からすれば御周知の通りだが、作中でティッピーの正体を知る、若しくは勘付いていた者は極少数*2である為、腹話術として通っていた経緯がある。ただ、おじいちゃんの魂は既にサキさんによって天国へと導かれ、現在のティッピーは本来のティッピーである事から、腹話術としての定義付けにも変化が生じるには当然の摂理であり、それ故に今月号にて「腹話術」が登場したと言えるのだろう。

 前置きはその辺りにして、今月号は腹話術を得意とする冬優ちゃんが、理世ちゃんに誘われる形で理世ちゃん邸にて腹話術を理世ちゃんに教える事が軸となっており、リゼフユはそれまでも大きな集まりで言う所の関係性はあり、客観的に見れば十分な関係性が構成されていると言えるが、2人だけで何かをしたり、2人だけの友情を育むと言うのはそれまで殆ど見かけなかった為、シンプルに「それまであまり見かけなかった関係性が一気に進展する」と言う意味で捉えても面白いが、ここで重要なのは「腹話術から繋がるリゼフユの関係性」「喜ばしい理由で腹話術を身に付けた訳では無かった冬優ちゃんに対して理世ちゃんがかけた言葉」である。

 リゼフユは前述の通り2人だけの関係性がそれまで深くあった訳では無かった事と、理世ちゃん自体理世ちゃんの人となりを良く知らない人からは、彼女が持つ軍人気質に裏付けされたちょっと怖い雰囲気を見て、思わずどこか勘違いされてしまう性質を持っている事*3もあって、今月号時点でも理世ちゃんから誘われた冬優ちゃんは「何か気に障るような事したのかな......。」と言わんばかりに、理世ちゃんに誘われた事に対してすっかり怯えた様子を見せており、少なくとも仲良しこよしな雰囲気があるとは言い難い様子が見受けられていた。尤も、理世ちゃんと冬優ちゃんは3つ年の差がある上、冬優ちゃん自身人見知りを凄くする人である為、冬優ちゃんも本心から理世ちゃんに対して怯えている訳では無いが......。

 しかしながら、冬優ちゃんが得意とする腹話術を理世ちゃんが教わりたいと言ったあたりから状況は一変し、自分が得意とする腹話術をもってして逆に理世ちゃんを圧倒させ、思わず理世ちゃんを辟易させる一面を見せたり、理世ちゃんとしても冬優ちゃんに圧倒されつつも、冬優ちゃんが気兼ねなく自分を発揮出来る様子を見て悪くなさそうな様子を見せたりと、形はちょっと特殊ながらもリゼフユの距離が急激に接近している様子が描かれているのである。個人的にはこれを見るだけで「リゼフユは距離感を一気に近付け、3つの年の差さえもはねのけ始めている」と思えるし、何より年の差を超えて共同作業に取り掛かる様子が非常に素晴らしいと思っているので、リゼフユ2人共にお互いの中を深め、2人だけの関係性が深められたと言う意味でも、今回の腹話術の練習は相当な意義を持つものだと思う。

 また、冬優ちゃんが腹話術を身に付けた経緯が今月号にて明かされ、それに対して理世ちゃんがかけた言葉が、ごちうさが持つ「優しさ」が色濃く表れた瞬間だったと個人的には思っている。抑々冬優ちゃんは腹話術を身に付けた経緯が「孤独だったから」と告白しており、孤独だった理由として「彼女が内気且つ積極的に話しかけられる性格では無かったから」なのはほぼ間違いないが、一方で彼女とて「孤独でも大丈夫」な人間である筈では無かった事と、それを鑑みると、彼女が腹話術を身に付けた理由に「寂しさを紛らわす為」と言うのがあっても何らおかしくはない為、彼女が言う様に「望んで会得した特技では無かった」と言うのも無理はないし、理世ちゃんに対しても「決して自分は凄くなんかないから」と、お世辞も明るい理由で会得したとは言えない特技なんて褒めなくても良いと言う態度を見せていた事からも窺える。

 ただ、そこで刺さるのが理世ちゃんが見せた優しさであり、理世ちゃんはそんな冬優ちゃんのネガティブな意見に対して、寧ろその特技があったからこそ私達は巡り逢えたと、冬優ちゃんが身に付けた特技をポジティブな方向性で褒め讃え、しかもその後に冬優ちゃんを誘った理由を明け透けに告白したのである。これは思わずごちうさが持つ優しさが色濃く表れたシーンだ」と感じ取ったものであり、どんなに自己評価が低い個性や特技を明かされても決して否定せず、寧ろその特技や個性があったから私達は惹かれあったと言える、理世ちゃんが持つ器量の大きさと深い優しさが激しく心を突き刺した場面でもある。何と言うか、これは「物事は何でも捉え様で良くも悪くもできる」と言う、如何にも心愛ちゃんが発言しそうな概念ものではあるが、この様な発言を普段は真面目且つしっかり者の理世ちゃんが言う事によって、心愛ちゃんとはまた違った良さと重みをもつ発言として機能しているのが良きポイントなのであり、個人的には「年上の人が肯定してくれた事の安心感と自信の高揚」がその一例だと思っている。

 そして、腹話術で繋がる運命と言うのは、かの理世ちゃんの優しさを体現する様な発言と、ジョジョの奇妙な冒険を読み進める中で構築していった概念であり、シンプルに表すと「リゼフユは冬優ちゃんの特技『腹話術』によって深き繋がりを勝ち得た。これは冬優ちゃんが手繰り寄せた運命だ。」と言う事である。ただ、冬優ちゃんは前述の通り腹話術は決して望んで身に付けた概念ではない為、このままでは冬優ちゃんにとって良き運命とは映らないと思うかも知れない。しかしながら、そこで活きるのが理世ちゃんの優しさを伴った発言であり、この発言があるお陰で過去の冬優ちゃんのもがいた努力が肯定されるだけでなく、その努力は後にかけがえのない人達と巡り逢う運命に繋がっていたと整合をとる事ができる様になると言う、正に「腹話術」があったからこそここまで手繰り寄せられた運命と見る事ができる訳であり、それはそれまで自分の特技に自信が無かった冬優ちゃんにとって、理世ちゃんと2人きりで巡り逢うと言う名の運命に救われたと言えるのかも知れない。

 尚、リゼフユがガッツリ絡んだ場所が理世ちゃん邸だったと言う事で、今月号前半では理世ちゃん邸に度々奉仕している狩手結良ちゃんも登場しており、作中では冬優ちゃんにメイド服を着させる*4、理世ちゃんと冬優ちゃん両者をからかう等、相変わらず変わらない立ち振る舞いを見せているが、それがある意味彼女の既定路線である為、昔に比べて大分馴染んでいる雰囲気もある。また、結良ちゃんもしれっと服を使って腹話術を披露しているのもポイントであり、他にもピアノが弾けたり、理世ちゃん邸で奉仕活動に勤しんだりするなどと、大抵の事は割とそつなくこなせる様子が窺える。それならば何故吹き矢の腕前はからっきしなのかとなるが、それが結良ちゃんにとっての不得手分野と言う事なのだろう。人間誰しも苦手の1つや2つはあるものなので。

 

新たな道を切り開く腹話術

 次に「腹話術」によって新たな道が切り開かれた事について考察してみたい。これは新生ティッピーになった事で、これまでのダンディーな声で喋るティッピーが事実上不可能になった中、智乃ちゃんが一生懸命練習した腹話術によってラビットハウスに新たな道が切り開かれた事を指しており、腹話術を練習しているのは理世ちゃんも同じだが、ここではマスターの孫である智乃ちゃんが、店の半ば名物と化していたティッピーの腹話術を自らの意志で継いでいく事に大きな意味があると捉えている。因みに「何かしらの手段や意思をもって新たな道を切り開く」と言う概念は、ジョジョ3部のホウィール・オブ・フォーチュン戦や、ジョジョ5部のジョルノ・ジョバァーナの影響を多分に受けたものであり、我ながらジョジョ好きとしての一面が存分に発揮されていると思う。尤も、前者は別な意味で話題に上る事が多い気がするが。

 ここから本題に入る。今月号前半では理世ちゃんが冬優ちゃんに教わる構図があり、ここではリゼフユが腹話術を通じて2人の友情や関係性を構成していく事が重要になってくるが、後半は智乃ちゃんが腹話術を一生懸命練習した事実が重要になっており、具体的に言えば理世ちゃんの努力に触発された智乃ちゃんが、ラビットハウスの名物となっていたティッピーの腹話術を受け継いでいく為に、自らの意志をもって腹話術に磨きをかけていくと言うものである。

 ここで重要だと思うのは「智乃ちゃんが自らラビットハウスの名物を受け継いでいき、新たな道を切り開く心意気を持っている事」であり、ラビットハウス自体、単行本11巻範囲の頃から大元のシックな雰囲気は残しつつ、新しいお客さんにも来て貰える様な雰囲気へと変化させていく流れが明確に確立されている。それに対して、智乃ちゃんとしても環境や境遇の変化を受け止め、新たな道を切り開いていく為に、自らの意志で駒を進めていく意思がある事は、彼女としてもおじいちゃんが完全にいなくなってしまった事によるショックを隠せない心境も正直存在する中で、彼女としても「どんな哀しみがあったとしても、それさえを乗り越えて自分達が更に先へと進めなければならない事は分かっていると言う事の証明」*5になる上、シンプルに彼女の精神的な成長を表してもいる為、新生ティッピーになったタイミングにおいて、彼女が明確に名物の腹話術を受け継いでいく意思がある事として重要だと考えている訳である。

 また、今月号後半では名物だったティッピーの腹話術を何とかして受け継いでべく、智乃ちゃんや理世ちゃんが2人して会得したての腹話術であれこれ試行錯誤を重ねていく場面があるのだが、個人的にはこれも凄く意味がある事だと思っている。何故なら、かなり乱暴な意見にはなってしまうが、ダンディーな声を発するティッピーが、おじいちゃんがサキさんに導かれた以上不可能になってしまった事を機に、ティッピーの腹話術自体にピリオドを打つ道、即ち腹話術そのものに幕を下ろす道があっても何ら不思議では無かった中、智乃ちゃんや理世ちゃんが腹話術を一生懸命努力していたと言う事は、そのまま「ラビットハウスの伝統を、形が変わっても何があっても継続させようとする意志」が、彼女達には存在している事の表れになるからであり、これはそのまま様々な経緯から細かい部分は変更する事があっても、楽しみにしてくれている人が1人でもいる限り、当該スタイルを完全に破棄する事は無いと言う彼女達の意思にも繋がる為、個人的には凄く良いと思うのである。

 尚、心愛ちゃんだけは3人の中で唯一腹話術を練習している描写が無く、本人の言動を見るに彼女は現時点でも腹話術を使える訳では無い様だが、心愛ちゃんにはその旺盛な行動力を活かした「企画の立案」を得意とする事と、多くの人の架け橋となり得る「コミュニケーション能力」に、友達を後押しできるだけの「胆力」等々の強力な個性があるので、ある種バランスが良く取れているとも言える。勿論、そこに腹話術が加われば鬼に金棒なこと間違いなしだが。

 因みにそんな心愛ちゃんは智乃ちゃんが陰で一生懸命腹話術の練習をしていた事を知っており、その事に対して智乃ちゃんから恥ずかしさ故の罵りを喰らっていたのだが、当の心愛ちゃんはその罵倒を嬉しそうに受け容れていると言う、智乃ちゃんから更に引かれかねない反応かましており、この場面を見て私は「まるで『紡ぐ乙女と大正の月』の藤川紡と一条雪佳みたいなやり取りだ」と思ったものである。尚、紡ちゃんと雪佳ちゃんの場合、年上の紡ちゃんが年下の雪佳ちゃんに対して何かと調子に乗りがちな事*6と、紡ちゃんが遠慮なしにズケズケと距離感を縮めてくる事もあって、雪佳ちゃんは紡ちゃんに対して基本的に塩対応で、あまりにしつこい場合は容赦なく殴りにかかる事もある等、行動が過激な節がある。ただ、何かと世話焼きであり、自分のあらゆる面を受け容れてくれる紡ちゃん*7に対して、雪佳ちゃんも内心では凄く好いている一面を見せた事もあり、その点はココチノと同じである。

 

今回の内容について思う事

ここからは主観的な展望や想いを強めた内容を書き出したい。今回も以前と同様コンパクトにまとめると言う事で、何卒宜しく願いたい。

絶妙な所を突くテイスト

 まずは今月号の印象について書き出したい。今月号では何と言っても「腹話術」がキーワードとなる構成をしているのもポイントだが、全体的に見ると「構成が絶妙な所を突いてくる」となる場面が多い印象があり、例を挙げると「それまで2人だけのしっかりした絡みがほぼ無かったリゼフユの絡みがある」「腹話術を通じて冬優ちゃんの境遇や運命が読み解ける」「仲間に触発されて広まるごちうさの構図が良く活きている」「ラビハにおける腹話術の在り方の変化から、おじいちゃんがいなくなった後のラビハの姿が窺える」等々と、読めば読む程その凄みが読み解けるだけでなく、人によっては「正にその場面展開が見たかったんだッ!」となる程に、今月号は全体的に細かな描写をもって、様々な需要を拾っている傾向が強くあると思う。

 また、今月号も絶妙な笑い所が多く仕掛けられており、最早お約束とも言える定石の笑いに、ごちうさならではのシュール色の強い笑いに、思わず笑いながらツッコミを入れたくなる場面にと、思わず笑いの感情をくすぐられる展開は多かった様に感じている。ただ、結良ちゃんがガッツリ登場する場面に関しては、嘗て程ではないとは言っても、人によっては「面白い」と言うより「怖い」と映る可能性は幾分ある様にも感じるが、私自身彼女の魅力はその異質な雰囲気をひっくるめてのミステリアスさにあると思うので、難しい所ではあると思う。後、単純に私が結良ちゃん並み或いはそれ以上に恐ろしく且つ魅力的な雰囲気を持ったキャラを多く知っているが故に、感覚が半ば麻痺している影響もあるのだろう。正に「慣れ」が一番恐ろしい訳である。

 全体的に見ると、コメディリリーフもとい単行本8巻以前の日常的な雰囲気を多分に感じさせるテイストが強かった先月号と比べ、今月号はその色は若干鳴りを潜めているが、代わりに「絶妙な匙加減をもって拵えた場面構成」が幅を利かせており、こちらは単行本9巻以降顕著に表れる様になった「新しい関係性」「変化と不変」を意識した内容と言える。また、理世ちゃんを始めとしてごちうさが内包している優しさひいては美しさをもろに感じさせる台詞が多い事」も特徴的だと思っており、その意味では今月号のお話は中々粋な回だと思う。

ごちうさが持つ優しさについて

 次に今月号を読んでいく上で印象的だった「理世ちゃんが見せた優しさ」について、純粋に思った事を書き出したい。抑々理世ちゃんひいてはごちうさが持つ優しさとは「相手の特性や個性を頭ごなしに否定せず、相手のあらゆる一面や事情を知った上で受け止める事」だと個人的には思っており、これは相手がどんなに意固地になって自分の個性や特性を前向きに捉えようとしなくても、その事実を否定する事無く、敢えて違った角度からアプローチを投げかける事で、結果的に他者の過去や思想を無闇に傷付けず、相手の心の雪解けを促す事にも繋がると言う、正に「寛大な心で包み込む事の象徴」だと捉えている。そして、ごちうさの世界ではその様な優しさがある事によって、智乃ちゃんやブラバ組を始めとした、言ってしまえば過去に辛い記憶が覆いかぶさっていた人達の心を動かし、今では智乃ちゃんやブラバ組も誰かの心を動かすだけの優しさを与える事の出来る存在になった経緯があり、それは他者に対する抜群の信頼の上で成り立つ、正に輝かしい事実そのものだと捉えている。

 この様な前提がある事から、今回理世ちゃんが冬優ちゃんにかけた言葉を見た時、私は「これこそごちうさが持つ優しさと美しさの一例だ!」と思ったものであり、3つ年上のお姉さんが年下に掛ける言葉としても、純粋にかけがえのない友達にかける言葉としても、これ以上ないまでの美しさが内包されていたと感じている。尤も、その事に気付けたのはごちうさ以外にも沢山のマンガを読んでいたから」だと思っており、もし現時点で未だにごちうさ一筋だったとするなら、良くも悪くもごちうさの価値観に対して「一種の慣れと絶対的信頼」が生じ、それに伴いどうしても特別さと有難みが薄れてしまうのは想像に難くない為、そうなっていたならば、恐らく今月号になって改めてその美しさにここまで感銘を受ける事も無かっただろう。本当に沢山のマンガを読もうと思った過去の自分に感謝である。

 また、沢山のマンガを読む過程で「優しさや美しさと言ったものは、それ自体が必ずしも明るい方向性に導く訳でも無ければ、抑々論として『それが100%良い結果をもたらすとは限らない』のも事実。大切なのは『それらをどの様に用いていくのか』なんだ」と言う、冷静に考えれば至極当然な事を、ジョジョを始めとしたマンガを通じて改めて考えさせられてきた経緯がある事にも大きく影響されており、これによってごちうさに対しても価値観の変化が結構起こっている。しかしながら、そんな中でごちうさ今までと全く変わらない優しさもとい美しさをもって、今月号でも私の心めがけて飛び込んできたのであり、そこにはごちうさが内包している確かな信念をも感じ取っている。だからこそ私は改めて感銘を受け、そこから今月では改めてごちうさの優しさ美しさに少しでも触れてみようと思ったのであり、それは結果としてごちうさ好きであった事の意味」を再検討する良い機会になったと思う。

 

 

2.単行本11巻の感想・考察

ここからは単行本11巻の感想・考察を書き出していきたいと思う。前述の通り、感想・考察と言うより感想中心の内容にはなると思うが、そこはご了解いただきたい。また、前回10巻の感想・考察記事を書いた時、本編もさることながらあとがきがかなり長くなってしまったので、今回はそんな事が無い様に気を付けたいと思う。

新たな門出の雰囲気

 まずは11巻の表紙の印象について書き出したい。11巻はココチノとブラバ組3人が、何れもどこか駅員さん若しくは船員さん的な雰囲気をもって描かれる中で、11巻のテーマに通ずる要素がそこかしこに散りばめられていると言う構図になっており、それはどこか「新たな門出」を思わせる美しさを内包している。

 ただ、私としてはこの表紙を見た時に思った感想は「統一感のない雰囲気が妙に怖い」と言うものであり、言葉ではうまく説明できないのだが、11巻の要素が様々散りばめられている事によって、どこかアンバランスな雰囲気を感じ取ってしまい、アンバランスさ故の不安や落ち着かない雰囲気がどこか怖いと思ってしまったのである。尤も、時間とともに人間慣れが生じてくるもので、今となってはそこまで不安を感じなくなっている。それがある意味一番恐ろしいとも思うが......。

 この様に私の中では複雑な事になっているが、表紙に描写されている物を客観的に見ると、「ラムネの瓶」は海シスト編を思わせ、上部に時計が設置されている「行先標識」は、ブラバ組ひいては心愛ちゃん達全体の今後の進路や行き先を暗示する機能がある*8と言え、行き先が書かれた「チケット」は、11巻中盤の銀河鉄道回」及び終盤に起こった、ティッピーもといおじいちゃんの運命や行き先を示唆する様な内容を思わせる等、全体的に「具体的な内容を示唆する描写が多い印象」がある。また11巻の表紙は、性質上未来に向けての雰囲気を強く描いていた10巻とは一線を画していると言え、今思うと「10巻には無かったアンバランスさが怖い!」となるより「内容に踏み込んだ描写が散りばめられているのが美しい......。」とならなかったのが惜しい気もする。

 表紙とは別カテゴリーにはなるが、11巻をめくって最初に出てくる映月ちゃんがとにかく良い雰囲気をしており、ブラバ組もとい神沙姉妹2人の軌跡や成長が色濃く表れた11巻に相応しいと思う限りだが、純粋にとても可愛らしいのが一番のポイントである。ただ、良く見ると外面モード時の映月ちゃんも描かれており、流石は抜け目のないKoi先生だと思うばかりである。

 更に余談だが、どういう訳か今回の11巻表紙を見て私は度々ジョジョ8部ジョジョリオンを思い浮かべたのだが、私自身ジョジョリオンは主人公やヒロインの名前、大まかな世界観は、ジョジョを調べていく過程で知る機会があった一方、原作に関してはまだ読んでいないので、何故にこんな事が起こっているか全く理解できないでいる現状がある。尤も、仮に理解したとしても「自分でもさっぱり分からない」となるのが関の山だと思えない......。本当に感覚でそう思ったとしか言えないので......。

美しさと怖さの共存

 11巻全体の印象として私は「美しさと怖さを内包した雰囲気が今まで以上に多くなっている」と言うものがあり、10巻以降新たに木組みの街の住人になったブラバ組が大きく躍進を遂げていき、心愛ちゃん達既存の木組みの街の住人組にしても、今まで以上に精神的な成長を遂げていき、特に「自分の進むべき道や、道を進む為に乗り越えなければならない壁を乗り越える意思を構築していく姿」は、正にごちうさの美しさが大きく投影されていると考えており、そのアプローチが様々あった事も相まって、今まで以上に成長による美しさが良く表れていると捉えている。

 ただ、一方で「銀河鉄道回」に付けられているサブタイトルに「憂鬱」を意味する「メランコリ」が入っている事、結果的には良い方向に進んだ事も多いとは言え、結良ちゃんが持つミステリアスな雰囲気が図らずもどこか不気味な方向に作用しているケースが少なくなかった事、智乃ちゃんやブラバ組を筆頭に精神的な成長を躍進的に遂げていく一方で、未だ気持ちの覚悟が付き切れておらず、何れ受け容れなければならない未来に対してどこか恐怖に思う気持ちが散見される事等々、全体的に美しさと対比する様に怖さが描かれている印象もある。しかしながら、これらは見方を変えると「成長している部分とそうでない部分」が対比されていると思えるだけでなく、美しさを強く感じさせる部分で描かれる「純粋に高校生と言う年頃故の『大人への成長の過渡期』」を示唆する様な構成になっていると言う捉え方もできる為、捉え様によっては怖いと思える要素を、決してそのまま怖いだけでは終わらせない構成は本当に凄いと思う。

 尚、10巻は終盤にかけて「うわっ......、こんな現実が待っていたなんて......。」と、思わず唐突にショックを受けかねないシリアス展開が目立つ一方、11巻は「哀しい事だが、何れは受け容れなければならなかった事は分かっていた運命。私達は遂にその様な運命をも乗り越えなければならない時を迎えたのだ。」と、哀しみを背負っても尚、前を向いて進み続けなければならない事を指し示すシリアス展開が多くなっている印象があり、結果的に「厳しい運命に直面しても尚、前を向いて歩き続ける意思が備わりつつある」のが描かれている様にも感じている。

補完された繋ぎの部分

 最後に単行本によって追加された「お話とお話の間に挟まれる挿絵」の中で、私が「これは凄く印象的だった」と思う挿絵に対する感想を書き出したい。抑々太字で紹介した挿絵と言うのは、単行本化されて差し込まれる事のある絵を指しており、普段はお話の後日談、補完が主となっているが、物によっては雑誌掲載時では1話毎にぶつ切りになっているが故に、お話の繋がり及び前後関係を余す事無く理解するのが難しかった部分が、挿絵のお陰で幾分読み解ける様になったり、挿絵によって物語に存在する因果関係に明確な裏付けができたりする事もあったりと、普通に本編の解釈を深めるにあたって絶対に外せない程挿絵が重要になる事もあるので、中々侮れないと思う訳である。

 そんな挿絵において、11巻の中でも特に重要だと思ったのは「ココチノの実家帰省編における、ちょこちゃん(心愛ちゃんとモカさんのお母さんの事)と智乃ちゃん2人による、ちょこちゃんにとっての思い出のアルバムをめぐったやり取りの一幕」であり、挿絵自体もちょこちゃんと智乃ちゃんが2人一緒にアルバムを見ている所を背後からひっそりと、智乃ちゃんのお母さんであり、ちょこちゃんの親友でもあったサキさんが見守っている*9と言う、中々に良い構図が表れているのだが、それ以上に雑誌掲載時はお話の合間だったが故に詳細な内容が窺い知れなかった内容を知れたのが大きく、これにより智乃ちゃんは「例のアルバムをちょこちゃんと一緒に見ている」と確証を得られただけでなく、最終的に智乃ちゃんとちょこちゃんの2人はどの様な経緯を遂げているのか。それが挿絵によって読み解ける様になっているのがあまりにも有り難く、今回重要なポジションに据えた所存である。因みにこのくだりの挿絵は2枚あり、2枚目の描写は色んな意味で必見である。

 余談だが、11巻の挿絵の中で一番インパクトが強かったのは「ブラバ組3人が見せるそれぞれのハートマークのポーズ姿」で、とりわけ例の睨み付ける様な目をもって威圧的な雰囲気を醸し出させ、ポーズもかなり特徴的な冬優ちゃんがあまりにも印象的だった。尚、神沙姉妹2人に関しても夏明ちゃんは恥ずかしさ故に顔が強張り、尚且つ視線も外していると言う状態であり、映月ちゃんは3人の中では一番ハートマークをノリノリで作っているが、ノリが良過ぎて逆にちょっと怖い節が出ており、総じて「3人共に一癖も二癖もある」と言う状態が完成している。ただ、その癖のある個性がそのままブラバ組の大きな魅力に繋がっている為、個性としてはそのままでも全然良いと思っている。流石に接客の際は、最低限のTPOを弁える形にするべきだとは思うが......。

 

3.あとがき

 以上がきらま2023年4月号掲載のごちうさ、及び単行本11巻の感想・考察である。今回は最早毎月恒例となったきらま掲載のごちうさ感想・考察だけでなく、2月22日に発売された単行本11巻の感想・考察も、1つの記事として合わせて書き連ねると言う、これまであまりしてこなかった手法を用いて書いており、内容も完全に分ける手法を取った為、本当に上手く作れるのか不安が無かった訳では無かったが、最終的には両分野ともに上手く1つの記事に落とし込めたので、そこは純粋に良かったと思っている。

 今月号のごちうさごちうさが内包している『美しさ』が強く顕在した回」と言う印象が強くあるが、それ以外にも新生ティッピーになった事による環境の変化も描きつつ、そのティッピーに深く関わりがある「腹話術」を用いて冬優ちゃんの過去にも触れつつ、それさえも優しさで包み込んでいくと言う、正にごちうさの十八番とも言える丁寧な物語展開と緻密な心理描写がそこかしこに存在する為、色んな意味でごちうさを好きであればある程堪らない構図がそこにはあると考えている。また、その腹話術からラビットハウスの新たな道筋が見えてくるのも興味深いポイントである。

 今回の記事でもジョジョを読んでいる事による影響は多分に出ており、特に3部「スターダストクルセイダース」と5部「黄金の風」の2つの影響が強い。また、ごちうさの感想・考察を書き進めたり、ごちうさを読み進めたりしている時でも「ジョジョ」を意識する事は度々起こり得るものであり、今回はジョジョ以外にもつむつきを思い浮かべると言う事案も起こっている。尤も、前述した様に最近ではそのおかげでごちうさの良さに改めて気付けると言う過程も生まれており、今月号において軸とした「優しさ」や「美しさ」もその恩恵に依る所が大きい為、結果的にはこの様なスタンスで良かったと言える。

 一方単行本11巻の感想・考察の方は、前半とは異なりごちうさ以外の作品を思い浮かべた機会はかなり少なく、せいぜい「美しさと怖さが共存している様な世界観」と位置付けた際に、世界観そのものは全く違っていながらも「平穏に見える日常の中に不穏がある」と言う意味で接点があるジョジョ4部「ダイヤモンドは砕けない*10を思い浮かべた位である。また、前半部分の記事執筆から日数が経っている事もあってか、書いている最中にごちうさ以外の世界観が突然飛び込んでくる事も殆どなく、終始割と一つの世界観に染まっていた気がしている。尤も、記事執筆時には何かしら音楽をかけている事が殆どなので、如何なる状況でも本当の意味で完全にごちうさだけの世界になっている訳では無いが、それはそれと言う事で。

 また、単行本11巻の感想・考察の方は、書く内容を編み出すのにも苦戦しており、理由は言わずもがな、普段からきらまでごちうさガッツリ読んでいる為、改めて内容を推し量ろうとしても限界があるからである。その為、今回は単行本特有の要素に着目して書き進めており、これが後述する超スピード執筆にも繋がっている訳だが、内容自体は書きたい事を盛り込めているので、これでも及第点である。

 今回は前後半共に記事の量をコンパクトにまとめる事を意識している為、特に後半は前回の単行本10巻の感想・考察に比べても幾分コンパクトにまとまっているが、その代わりに執筆スピードをかなり上げており、結果的に前半のきらま掲載のごちうさ感想・考察の部分は3日・4日で、後半の単行本11巻の感想・考察だけだと僅か数時間でほぼ完成に持っていくと言う状態になった。我ながら結構ハイスピードに仕上げたと思うが、ごちうさへの想いはしっかりと書き出せたと言う事をもって、この感想・考察記事の締めとしたい。

 

 

おまけ

今回の文量は全て合わせてのべ400字詰め原稿用紙38枚分である。今回は複合記事である為、コンパクト化を意識する前の文量を思わせる位にはなっているが、それぞれの項目自体は割とコンパクトにまとめている。

*1:実際には2月23日には完成していましたが......。

*2:今月号時点でも、その正体を明確に知る者は智乃ちゃんにタカヒロさん、それに銀河鉄道回にて感付いた節を見せた青山さん位なもので、他にもその正体に気付いている素振りが見受けられる人物こそいるにはいるが、それを証明するだけの客観的描写がない為、現時点では何とも言えない。

*3:実際に智乃ちゃんからも、理世ちゃんと出逢った当初はその軍人気質さ故に若干怖がられていた経緯がある。但し、智乃ちゃんの場合初対面からどこか物騒な雰囲気をもって話しかけられていたので、恐怖を抱いても無理はなかった事情はあるが......。

*4:冬優ちゃんは最初こそ照れくさそうにしていたが、最終的にはマヤメグの2人に指摘されるまで、メイド服を着たまま帰路についていた事に気付かない程に、メイド服を着た状態でもごく自然な感じになっていた。

*5:尚、これもジョジョ5部終盤のジョルノの言動に多大なる影響を受けている。

*6:紡ちゃんは雪佳ちゃんの事を心から気に入っており、もっと雪佳ちゃんとの距離感を近付けたい表れでもある。因みに紡ちゃんが調子乗りなのは本人の性格に依る所が大きい。

*7:彼女は元々誰に対しても分け隔てない接し方をする人だが、雪佳ちゃんに対してはそれが顕著に出ている傾向がある。

*8:それが私の中では一抹の恐怖をもたらしてもいるのだが。

*9:その際、サキさんは結構大きめなリアクションを見せている。

*10:因みにこの4部主人公「東方仗助」が着用している改造学ランは、私自身結構かっこいいと思っているし、好きなデザインでもある。