多趣味で生きる者の雑記帳

現在は主にごちうさに対する想いについて書いています。

きらま2022年8月号掲載のごちうさを読んだ感想・考察

 こんにちは。私自身更に多忙となり、先月もブログ記事を完成するまでにかなりの時間が掛かってしまいましたが、これは私の時間の使い方が上手くなかった為で、今月はそれなりにスケジュール調整を立てた上で書き進めようと考えていますので、時間こそかかるとは思いますが、先月よりかは早く進められるように努力したいと思います。

 さて、今回はまんがタイムきららMAX2022年8月号掲載のごちうさを読んだ感想・考察を書き出したいと思います。今月号は先月号のブロカント(古物市)において、心愛ちゃんが購入したものから古いシストの地図が見つかった事で始まる回であり、テーマとしてもごちうさではとても珍しい「海」が登場したり、シストをめぐって今後の展開の布石になっていたりと、全体的に今後の展開を位置付ける重要なお話の雰囲気があり、それ故に今月号も思わず琴線に触れる様な事柄が多いので、今回も今までと変わらない想いを書き出していきたいと思います。

※注意※

 最新話及び原作10巻以降のネタバレを含むものなので、その辺りをご了解お願い致します。また、ここで書き出した推察や考察は個人的な見解です。そして、今回は比較的マイルドとは言え、やや暗い考察や重めの内容もなくはないのでご注意下さい。

1.はじめに

 今回のお話はシスト*1を発端にしたものであり、主軸となるメンバーも木組みの街の住人7人と、原作9巻中盤付近までのごちうさを想起させる様な構成になっているのがポイントである。その為、今月号はブラバ組を除いた既存メンバーに中心的な焦点が当てられているのだが、今月号はその既存メンバーの事情をめぐって中々スケジュールの折り合いつかないと言う描写が存在しており、最終的には丸く収まるとは言え、全体的な流れの見方によっては「原作10巻終盤から11巻序盤で明かされた『運命のターニングポイント』をどことなく意識している」とも見て取れ、それは「何れは向き合わなければならない命運」を暗示しているとすら思えてくる。

 今月号の扉絵は、先月号や先々月号の様な「扉絵の構成もその回のストーリーに深く絡んでくる」と言ったテイストから、「その時の季節に合わせた雰囲気が盛り込まれている」と言ったテイストになっており、故に今月号の扉絵は、私としては今月号全体のストーリーも鑑みて「今後の展開を暗示するとともに、作中の季節と現実の季節を採り入れた内容になっている」と捉えている。尚、ごちうさの扉絵は昔から意味付けが豊富なので、故に今月号の様な描写も至って普通に存在しているのだが、なまじ先月号までとテイストが変わっていたので、初めて見た時はそのテイストの変化っぷりに驚いた。

 そして、今月号を読んでいく中で私が特に気になったのは、良くも悪くも嘗てとは一線を画す雰囲気が増えてきた近年のごちうさにおいても、ハッキリと描かれている印象がさほど無かった「蠢く不安や後悔に対する向き合い方が、限定的とは言え今月号は割とハッキリ描かれていた事」であり、これは恐らく原作10巻から11巻にかけて描かれていた「高校3年生組が決断している進路選択に伴う運命の岐路」*2が大きく関係していると考えており、これを汲む事で今後の展開がある程度読めてきそうなものだが、ここでは「その『不安や後悔』に対する向き合い方がどの様なものか」を中心に書き出していきたい。

2.購読した感想・考察

新たなる世界への誘(いざな)いと厳しい現実

 今月号は「『海』が目的地のシストの地図を手にした心愛ちゃんが、皆を誘って『海』に向けて出発するまでの物語」が中心となっており、故に今月号では海は登場していないのだが、今回は『海』に行くまでの物語も非常に重要であり、そこには多くの苦節が見え隠れしている内容になっている。と言うのも、心愛ちゃんと紗路ちゃん、そして千夜ちゃんは現時点で高校3年生であることと、現時点でも結良ちゃんを含めた11人全員がアルバイト勤務を行っているもしくは検討を開始している為、抑々「皆でどこかに遠出する事」そのものが容易な事では無くなっているからであり、この事実は私が今月号に対して強く感じている「不安や後悔、そして運命のターニングポイント」にも深く関わっている。

 この様な背景もあってか、今月号前半はごちうさでは比較的珍しめの「現実はあくまで厳しいと思わせられる内容」が割とストレートに描写されており、ギャグ要素も散りばめられているとはいえ、全体的に見れば10巻終盤から11巻序盤程の異質さでは無いが、普段のごちうさの様な雰囲気とも言い難い構成になっているのは事実である。ただ、冷静に考えてみても殆どのメンバーが既に学業とアルバイトと言う二足の草鞋を履く環境下にあること、心愛ちゃん、紗路ちゃん、千夜ちゃんの3人は高校3年生故に進路選択を迫られていること、神沙姉妹にしても将来的にアルバイト勤務を視野に入れていることから、現時点でも「全員揃って外出する事が難しいのはどう考えても明白」であり、それ故に今月号の展開も正直「何時かは必ずぶつかる事が分かり切っていた壁」とも言えるのだが、その壁にぶつかった時の心愛ちゃんの凹み具合は相当なものであり、その威力たるや、心愛ちゃんの涙ぐんだ反応を見せられたが故とは言え、少々の苦難・苦行ではまずもって動じない理世ちゃんですら思わず涙を見せる程だった*3為、私としてもその心中は中々に複雑なのだが、それでもこれまでのごちうさには早々無かった新鮮味溢れる展開は特筆すべきポイントであり、前半ではそんな新鮮味溢れる展開と、心愛ちゃん達が見せた絡みから見えてくる概念について書き出したい。

「海」へと導く道しるべ

 今月号前半の重要キーポイントは、何と言っても心愛ちゃんが先月号のブロカントで買った品物から見つけた「目的地が『海』のシストの地図」であり、これに関してはそれまでのごちうさでは殆どなかった『海』が登場してきた事もあって心愛ちゃん達の驚きと衝撃が入り混じっていたのも印象的だし、私としても「遂にごちうさでも海が登場してきたのか……!」と思ったものである。因みにシストの地図はかなりの年代物らしく、故にそれ相応の年季の入ったものが地図に記された所に眠っている印象が見受けられていたが、そうなってくると私としては心のどこかで「今回の地図は誰からの贈り物なのだろうか?」となってくる訳だが、当然の事ながら今月号時点では分からず仕舞いであり、今後のお話においてもそれが明かされるかどうかは正直不透明だと言うのが私の考えである。しかしながら、作中においてブロカントは「誰かの想いが熱烈に込められた物の交流場」と言う一面が強く存在しており、それは先月号のブロカントや原作5巻のブロカントを見れば一目瞭然な訳だが、私としてはそれ故に「今回の地図にも誰かの想いが熱烈に込められている」と思ってやまず、しかも目的地がそれまでのごちうさでは殆ど見かけなかった「海」ときたのだから、もし仮に誰が記した地図なのかは終ぞ分からなくても、その地図に記された場所に何か強い想いが込められているのは読み解けるし、ひいては「このシストの探究を通じて、彼女達は更なる高みへと躍動していく」とも思っている。

 そんな「海」への道が記されたシストの地図だが、これにはメッセージアプリを通じて情報が送られてきたマヤメグの2人もびっくりであり、フルールでバイトをしている麻耶ちゃんはその場に居た紗路ちゃんと夏明ちゃん2人に、甘兎さ庵でバイトをしている恵ちゃんは千夜ちゃんと映月ちゃん2人にそれぞれシストの事を伝えているが、神沙姉妹は2人してプライベートビーチで「海」を楽しんでいた過去がある為か、「海」に対してさほど興味がない様子*4であり、紗路ちゃんにしても予定が合わないと言わんばかりの趣旨の反応を示しており、千夜ちゃんに至っては新作メニュー名の創作に没頭且つ苦心惨憺*5していた為、抑々話を聞ける状態になかった(後に電話で不参加を表明)と言う結果であり、また冬優ちゃんにしても「海は苦手」という事で事実上の不参加表明をしており、これには智乃ちゃんも納得していたが、何れにしてもこの時点で「皆で集まって遠出をする事」が昔と比べて難しくなっているのは明白であり、結局この時点でラビットハウス3人だけで海を目指す事がほぼ確定し、理世ちゃんが気を利かせて結良ちゃんを誘ってみるも、彼女も不参加を表明する結果に終わる事となった為、この時点では完全にラビットハウス3人組だけでのシストとなってしまったのである。

 この様なシビアな現実が見え隠れした展開に対して私としてはごちうさにしては珍しい展開」とは思ったものの、前述した様に心愛ちゃん達は基本的に「学業とアルバイトを両立している身」である事から、全員でどこかに遠出する事が難しいのは明らかな事実であり、実際に今までのごちうさでも、誰かがバイト若しくは学校の都合で集合できない若しくは遅れてやってくると言う展開は度々存在していた事から、私自身「何時かは必ず直面する事だった」とも「今までがある意味奇跡だった」とも思わなくもなく、それ故に今回の事例に対してごちうさにしてはシビアな展開だが、彼女達が勤勉実直な事を鑑みれば、何時かはぶつかる事にならざるを得ない壁だった」と言うのが私の正直な想いだが、それでも今月号の様に「殆どの人が都合が付かずに行けないと言う意思表示をする」と言う展開はほぼ皆無であった為、シビアな現実そのものに対しては一定の理解を示せたものの、ラビットハウス3人組以外の予定が全く合わなかったと言うのは只管に衝撃的であり、この時点でも正直そこまで直視できる様な展開では無かったのだが、私が更なる衝撃を受けたのはこの先にあったのである。

落胆と再起

 ここまででもかなり衝撃の振れ幅が大きい展開であったが、私が衝撃を受けたのは皆が容易に集合できなくなっていると言う事実に打ちのめされた心愛ちゃんが力なく発した言葉にあり、その言葉からは普段の楽観的且つ前向きな心愛ちゃんの姿はなく、そこにあるのは「大人になる事の哀しみと悲愴感」をもろに感じさせる程に傷心した心愛ちゃんであった為、これだけでも相当なものだが、加えてそんな心愛ちゃんを励まそうと声を掛けた理世ちゃんでさえも、心愛ちゃんの痛い所を突く一言を涙ながらに訴えかけられた事で、普段滅多な事では弱らない彼女でも途端に涙目になっていた事も殊更に衝撃的であり、理世ちゃんとしても友達と集まれないのは寂しいとともに、心愛ちゃんには弱っていて欲しくないと思っているのが窺える場面でもある。

 心愛ちゃんが呟いていた「大人になる事の悲しみと悲愴感」について私としては、これはどう足掻いても「それが現実の厳しさ」だと言わざるを得ない内容だと思う程に、心愛ちゃんが核心を突く様な発言をしていた為、正直どの様に言及するべきなのか良く分からないのだが、事実問題として心愛ちゃんは自身の姉であるモカさんと対等だと思える存在になる為にも、高校卒業後に木組みの街を離れ、パンの修行に出る決断を内に秘めている事が原作10巻終盤において明らかになった訳だが、その決断をする事で否が応でも木組みの街にいる友達とは容易には集まれなくなる事も覚悟しなければならないのは自明の理である事から、今回の心愛ちゃんの発言に力が無かった事や、友達と容易には集まれない事に対して寂しさを覚える事自体は、人間なら誰しもなり得る事なので十分に理解及び納得できる訳だが、その一方で心愛ちゃんが立てている将来像を目指す為には、この様な厳しい現実もきちんと受け入れなければならないのも事実である為、やはり私としては「それも乗り越えなければならない試練」と思わざるを得ないのだが、この様な厳しい意見を持っているのは心愛ちゃんが本気で叶えたい夢がある事を知っているからであり、故に迷いはあってもその意思は堅牢である。

 また、心愛ちゃんの涙ながらの発言を聞いて思わず涙を浮かべていた理世ちゃんについても、理世ちゃんが情に脆い一面があるとは言っても、普段は直ぐに切り替えて気丈な振る舞いに戻り、心愛ちゃん達をフォローする役回りをする事が大半な為、今回の様に相手の感情に感化されたままその感情を引き摺るのは珍しく、故に中々に衝撃的だった訳だが、この様な事になったのは、恐らく理世ちゃんにしても心愛ちゃんの力なき発言が的を射た内容だと理解していた事と、フォローを入れようにもそれを確約できるだけの保証がどこにもないも分かっていた事から、彼女も心愛ちゃんと同じ様に友達と容易に集まれない事に対する寂しい気持ちが、心愛ちゃんの涙目を見た事で一気に増大したためだと考えられるが、何れにしても心愛ちゃんも理世ちゃんも「大人になるなら必ず背負わなければならない事実の一端」を今月号にて突き付けられた事に対して、かなりの寂しさと悲愴感に襲われていた訳であり、それは普段の2人からは想像だに出来ない程の痛々しさを感じさせる雰囲気となっている。

 ここまで悲しみに暮れる雰囲気が続く展開だが、ここで心愛ちゃんと理世ちゃんのやり取りを見ていた人が喝を入れ、そこから再起する流れとなっていくのだが、その喝を入れた人が智乃ちゃんなのかティッピーもとい智乃ちゃんの祖父なのかが私にはハッキリ分からず、多少なりとも困っているのだが、台詞の勢いや口調を見るに恐らくはティッピーだと思われ、その喝の内容は正に「酸いも甘いも噛み分ける様な人生を送ってきた智乃ちゃんの祖父の、正に『人生の大先輩』だからこそ言える事」と思うに相応しいものである。そして、その喝によって心愛ちゃんと理世ちゃんはネガティブな雰囲気からすぐに脱し、再び『海」が目的地のシストに対して邁進(まいしん)するのだが、冷静に考えてみてもかなり凹んでいた2人を一瞬にして元の2人に戻すだけの言葉を送れるティッピーはやはり凄いと思うし、ラビットハウスの良い関係性が良く分かる場面だとも思う。

 この様に今月号前半は場面によって登場人物の気持ちの浮き沈みが激しい面があり、故にどこを読んだり考察したりするかでその印象は大きく変わる訳だが、その中でもインパクトが大きいのは「新たなる目的地たる海に向かう事実に心を躍らせる場面」「友達と集まって遠出をする事が決して当たり前の様に出来る事では無かったと思わされ、その現実に少なからず意気消沈する場面」だと思われ、何れも今までのごちうさでは見られなかったインパクトを伴っていた印象があったが、この様な事実を突き付けられた上で更に複雑な気持ちにさせるのは、10巻終盤から11巻序盤で明かされた心愛ちゃんと紗路ちゃんの「自分の夢の為に木組みの街すらも離れる覚悟」が描写されている事を鑑みると、今回の苦難も「将来を見据えるなら必ず受け止めなければならないと否が応でも分かる事」であり、ストレートに現実の厳しさを物語らせる描写は見ていて心に刺さるものがあるが、一方でティッピーの「酸いも甘いも噛み分けてきた人生に裏付けされた喝」によって再び気概を取り戻す勇ましい場面もあり、故に今月号で垣間見えた厳しい現実は「例え受け入れ難い程の現実でも前を向いて進まなければならない時もある」とも「立ち止まっていては何時までも成長はしない」と言った厳しいテイストにも感じられる訳だが、これを一連の流れとして捉えると「厳しい現実に一度は気後れするものの、ティッピーの喝を受けて、現実を受け止めた上で再び歩みを進める」と言う流れになり、この場合単なる厳しさだけには留まらず、その厳しさをどの様に受け止めていくのかも見える様になる為、ここでも新たな「成長(と言うより覚悟)」が見て取れる訳である。

後悔なき選択と新たなる未来

 ここから今月号後半と行きたい。今月号後半では前半の「厳しい現実を目の当たりにされる」のとはうって変わり、数多くの「粋な計らい」によって一度は諦めた7人でのシストの探究が再び現実のものになったり、その前段階でもラビットハウス3人組のみでも前向きになっていたり、その過程で理世ちゃんが「今後のごちうさにおいては非常に肝要」となる発言をしていたりと、前半とは別ベクトルで胸を打たれる展開となっているのが特徴である。その為、後半では最近のごちうさではよく見かける「友達との繋がり」「一つ一つの出来事を大切に想う心意気」なるものがひしひしと感じられ、10巻終盤から11巻序盤で明かされた大きな決断を嚙み締めながら想いを馳せると、その想いはより一層大きなものとなるだろう。

 尚、今月号では「シストの目的地へ向けて出発するまで」に重点が置かれている為、今回のお話では「海」は最終局面で登場する程度の端役となっているが、その出発をめぐって今回は目立ったハプニングは発生していないものの、ティッピーの意味深長な発言が、最後の最後に一縷の不安を掻き立てているのが印象的であり、やはり「来たる現実からは絶対に逃れられない」と言う訳なのだろうが、一方でティッピーの発言は、それだけ「智乃ちゃんが精神的にも成長した証」でもある為、何とも言い難い感触はあるが、それは今後の展開に譲ると言う事なのだろう。

理世ちゃんの展望と後悔なき未来

 前述の様な紆余曲折を乗り越え、何時もの調子を取り戻したラビットハウス3人組は、遂に出発当日を迎える事になるのだが、そこで智乃ちゃんの父であるタカヒロさんが見せた立ち振る舞いが正に粋な計らいを地で行く印象があり、元々茶目っ気ある一面を見せていたタカヒロさんだが、今月号にてもそれは健在な事をまざまざと感じさせてくれている。そして、まずはココチノの2人がラビットハウスを出発し、後から理世ちゃんと合流するのだが、その時に理世ちゃんの口から明かされる、彼女が何故このシスト探究に参加しようと思ったのか。その理由が個人的には相当に感慨深かったのである。

 理世ちゃんが明かしたその理由とは、云わば「些細な事でも後悔が残らない決断を意識したい」と言うもので、これは普段の理世ちゃんならまず言い出さない事である上、客観的に見ても親密な仲柄相手に言い出すのは結構照れくさいのは明白な為、心愛ちゃんに指摘された際に理世ちゃんは思わず必死になって照れ隠しな行動に出ていたが、私としてはこの理世ちゃんの発言は「ある種の真髄」とすら受け取っており、照れくさいのも十二分に分かっていたが、それ以上にそう遠くない未来にやってくる「一旦は離れ離れの道を歩む事になると言う現実」に対して、「その現実が分かっているなら、私はその時までのきっかけ全てに対して後悔なき選択をしていきたい」と言わんばかりの彼女の強き想いに心を打たれたのである。

 今振り返ってみれば、ごちうさ「心愛ちゃんを中心にしてセカイがどんどん拡張されていき、その拡張はとめどなく続き、またそのセカイは永遠たるものである」と言う印象が強くあった様にも感じており、特に原作4巻以降心愛ちゃん達の親密度が更に濃いものになった事により、その印象はより鮮明になっていき、最初はそんなセカイに対して戸惑いと苦悩が隠し切れなかった私も、時が経つにつれて戸惑いも苦悩も消えていき、何時しか心の何処かで「このセカイはずっと続いていくもの」だと思う様になっていた。そして、原作8巻から9巻にかけての旅行にて後のブラバ組たる冬優ちゃん、夏明ちゃん、映月ちゃん3人との出逢いを果たし、9巻後半で木組みの街に来訪してからはその3人を含めたセカイの拡張となり、10巻では理世ちゃんの同級生兼幼なじみである狩手結良ちゃんも含めて、セカイはさらに拡張の一途を辿り、これからもそれが続いていくかと思いきや、10巻終盤から11巻序盤で明かされた事実は、そんな希望的観測を容赦なく打ち砕いたと言わざるを得なかった内容であり、そこで「今までのセカイは決して『当たり前』なんかではなく、何一つ欠かす事の出来ない要素の上に成り立っていた、云わば『奇跡の日々』だった」と改めて思い知らされた。尤も、その事実が全く予想できなかったと言えばそれは嘘になるし、事実原作10巻終盤で明かされた事実も、今までのごちうさを振り返ってみると「きちんと筋が通った堅牢な決断」だと分かる様になっており、もっと言うなら原作10巻終盤以前も「今のセカイは決して確約されたものではなく、幾つもの奇跡と運命的な選択の上に成り立っているもの」と分かる描写そのものはあったのだが、それでも原作10巻終盤の「2度にわたって時間差で衝撃的な現実を唐突に突き付けられる」に比べれば全然可愛いもので、あの衝撃に勝るものは正直無かったと思う。

 しかしながら、原作10巻終盤にて「今の優しさと幸せに満ちたセカイは、数々の奇跡と運命的な選択の上で成立していた、正に『奇跡』の日々であり、それはなにも確約されたものでは決してなかった」とハッキリと分かった事で、「その奇跡の様な日々に対して後悔の無い様にしていきたい」と言う想いがより鮮明に伝わるとも考えており、理世ちゃん自身がこの様な現実に対してどこまで考えているかは分からないものの、少なくとも「今の日々を後悔が無い様に過ごしたい」と思っているのは事実であり、そこには彼女なりの「これからやってくる現実との向き合い方」如実に示している様にも思えてくる。 

 ここまで色々と書き出してきたが、纏めると私が理世ちゃんの発言に対して「ある種の真髄」とまで思った背景には、彼女が原作10巻終盤にて「今まで当たり前の様にあったセカイが、実は奇跡のバランスの上に成り立っていた賜物だった」とハッキリ突き付けられ、今月号においてもそれを裏付ける様な現実に見舞われる中で、心愛ちゃんに触発されて涙を見せる一幕がありながらも最終的には「己の信念を強く反映した考えを構築していた事」が大きく、また理世ちゃんの「些細な事でも後悔なきように」という信念が、私自身が持つ信念とシンパシーを感じたのも理由として存在している。そして、理世ちゃんがその様な信念を掲げた理由として私は「これから必ずやってくる現実との向き合い方を示す為」とも認識しており、現時点ではまだそこまで重要ではないとは考えているが、今後の展開次第では重要になってくるとも認識している。

集結の時と粋な計らい

 紆余曲折がありながらも元の気概を取り戻したラビットハウス3人組とティッピーだが、ここから良い意味で衝撃の展開が続く。と言うのもラビットハウス3人組とティッピーで、シストに描かれていた「海」へと歩みを進めた矢先、まずはマヤメグの2人が合流し、そのあとすぐに千夜シャロの2人も合流する事で、一度は断念せざるを得なかった「7人でのシスト探究」が何と叶えられる事になったからであり、これには只管に驚きものだが、これにもちょっとした粋な計らいが存在しており、それは抑々千夜シャロとマヤメグが当初シストの探究には行けそうもなかった最大の理由として「バイトのシフトが上手く噛み合っていなかった事」があった中で、これを知ったブラバ組の3人が「代わりにバイトのシフトに入る」と言う形で4人の都合を付けられる様にして、7人でシストの探究を出来る様にしたと言うもので、ブラバ組3人にとっては「ありのままの私達を受け止め、理解ある友達として、私達に色々としてくれる事に対するお礼」だそうだが、私としては「これ程粋でかっこいい事も早々無い」と思うまでにブラバ組の行動は凄いと考えている。尤も、肝心の仕事の能力に関しては、神沙姉妹の2人して冬優ちゃんから「大丈夫ではない」と心配される面もあったが、何にしてもブラバ組の粋な計らいは相当にかっこいいと思う。

 ところでブラバ組の粋な計らいについては私自身相当に美しいものだと捉えているが、何故ブラバ組がこの様な事を行ったのかは気になる点であり、作中では「普段のお礼」として描写されているが、私が気になるのは「ブラバ組の3人は、木組みの街の住人7人が抱えている『現状や未来』を詳しく知っていたのかどうか」であり、最早容易には集まれなくなっている7人の現状を踏まえて、今回の様な粋な計らいを見せたのか、それとも純粋に普段の恩返しがしたくてこの様な計らいに出たのか。結論から言えばどちらであっても「ブラバ組は友達想いの優しい人が集まっている」となるのだが、この2つではブラバ組が木組みの街の住人7人に対して与える意義に若干の差異が生ずるため、何れの場合もブラバ組の人柄の良さを証明しているのは疑いない事実だとは言え、私としてはどちらであるのか少々気になった所存である。

 何れにしても肝心なのは「ブラバ組の3人がどちらの考えを重視しているのか」だと考えており、私は今月号の流れを踏まえた上で、冬優ちゃんは木組みの街の住人7人が抱える現状や未来の進路選択を目の当たりにしていることと、神沙姉妹2人は普段から7人に対して相当な恩義を感じていることを鑑みて、冬優ちゃんは7人の未来を見据えた思想寄りの、神沙姉妹2人は7人に対する恩義のお返し寄りの思想をしていると捉えており、これを組み合わせる事でブラバ組全体としては「7人の未来を見据え、普段からの恩返しも兼ねた粋な計らい」になっていると捉えている。勿論、冬優ちゃんも神沙姉妹2人の様な想いは絶対にあると考えているし、逆もまた真なりと考えているのは当然だが、冬優ちゃんと神沙姉妹2人とでは木組みの街の住人7人からもたらされたものの過程に若干ながら違いが存在している事から、今回はその7人から特に授かったものを冬優ちゃんと神沙姉妹2人、それぞれ強調して定義付けした次第であり、根底は同じ想いでも、何を強調して伝えたいのかは冬優ちゃんと神沙姉妹2人では少々異なっていると思う訳である。

新たな歩みと意味深長な言葉

 この様にして木組みの街の住人7人とティッピーは無事に全員で「海」が目的地のシストの探究に向けて歩みを進める事が可能になり、それに浮かれる様にして心愛ちゃんが智乃ちゃん目掛けて自分のテンションの高さをぶつけていたのは印象的だが、それを見ていた千夜ちゃんは少しばかり調子に乗り、紗路ちゃん目掛けて明らかに当たったら痛いであろう勢いで突っ込み、紗路ちゃんを若干怒らせている一幕があり、私としても「千夜ちゃんは変わっていないなぁ」と思った訳だが、何故千夜ちゃんが紗路ちゃんに対して心愛ちゃんが智乃ちゃんに対してやった様に優しく突っ込まず、突っ込まれた方が明らかに痛いと分かる威力で突っ込んだのかは全くもって謎であり、分かっている事は「千夜ちゃんの行動には悪戯心はあっても悪意はない事*6と言うものだけである。因みに千夜ちゃんが突っ込んでいく様は格闘ゲームや対戦アクションゲームにおける「DA(ダッシュ攻撃)」を思わせるものであり、そりゃそんな姿勢で突っ込んだら紗路ちゃんが痛がるのも無理ないとはなるが、何度も言う様に千夜ちゃんが何故にそんな姿勢で紗路ちゃん目掛けて突っ込んだのかは不明であり、強いて言うなら「幼なじみ相手だからこそ仕掛けられる悪ノリ若しくは悪戯」となるのだろうが、何れにしてもその様な行動を何故に取ろうと思ったのか。その理由は作中からは殆ど窺い知れない為、考えたとて暗礁に乗り上げるだけなのかも知れない。ある意味「小悪魔」もとい「鬼畜和菓子」ここに到来である。

 そんな一幕もありつつ、一行は海に向かうべく列車に乗り込むのだが、その道中ボックスシート*7に揺られながら理世ちゃんが発していた「後悔なき未来への展望」を心愛ちゃんが皆に向けて話している場面があり、理世ちゃん本人はかなり照れていたものの、皆は理世ちゃんの考えに全面的に賛同しており、やはり「当たり前ではない、かけがえのない日常を一つ一つ大切にしたいと言う想いは皆同じ」と言うのが良く分かる。

 しかし、私が気になったのはこの先の「ティッピーと智乃ちゃんのやり取り」であり、理由としてその展開は少しばかりとは言え、二ヶ月前に想像を絶する程の衝撃をもたらしたかの銀河鉄道回で語られた内容」に通ずる雰囲気さえ持ち合わせている内容だったからであり、その場面は丁度遂に「海」が見えてきたタイミングだった事から、本来なら喜ばしいと思うのは当然だし、実際に智乃ちゃんとティッピーのやり取りからも「海が見られた事を智乃ちゃんが嬉しく思っている雰囲気」は存分に感じられる上、そこからは「智乃ちゃんの優しさ」さえも大いに感じられるのだが、如何せんティッピーが切り出した内容が内容だった為、私はそんなティッピーの意味深長な言葉に対してどこか「一抹の不安」を抱え込みながら、今月号の顛末を見守っていたのである。無論、不安を払拭する様に心がけて読む方法もあっただろうし、そうでなくても必要以上に不安を拡幅する必要も無かったのだろうが、元々私はごちうさに対しても良くも悪くも対比的な物の見方(早い話が光と影)を意識している事から、ここでも例外なくそれを意識した物の見方をした訳である。

 ただ、ティッピーの意味深長な発言が何時どのタイミングで確固たる現実となるのか。それについては私自身最早予測がつかない。何故なら、今後どの様な展開になっていくのかが、現時点でも全くと言って良い程分からなくなっているからであり、現に今月号だけでもあの「銀河鉄道回」から僅か2ヶ月後の掲載タイミングで、木組みの街を飛び出して「海」に向かう展開になったのも正直「全く予想だにしなかった展開」だったし、その過程の中で「ティッピーの意味深長な発言」が飛び出してくる事も当然全く想像つかなかった内容であり、挙句今月号にて心愛ちゃんと理世ちゃんの口からあの様な言葉が飛び出してくる事も、内容自体は予測できる下地こそあったとはいえ、今月号の段階で表立って出てくるとはやはり想像も出来なかったと、私にとって今月号は「想像だにしなかった事のオンパレード」である事を思えば概ね理解して貰えるだろう。

 しかしながら、今後のお話の展開予測そのものに関しては最早私の手には負えなくなっているのは事実でも、それぞれが歩んでいく未来や歩んでいく道筋の大まかな予測や、描写された現状を分析して、今のお話が未来に何をもたらし、どの様にして繋がっていくのかの考察に関しては十分可能であり、言うならば「新しいお話の展開そのものの予測は難しくても、明らかになったお話から、彼女達が置かれている現状を分析したり、彼女達の未来や将来像を考察したりする事は十分可能であり、そちらに注力する」という事であり、これが私の感想・考察のスタイルでもある。

 説明が長くなったが、これらを踏まえてティッピーの意味深長な発言を考察するなら、私としてはやはり「おじいちゃんは何時か智乃ちゃんの元から離れる時が来る」という事をあの意味深な発言から読み取っており、かの銀河鉄道回」で語られた内容は、嘘偽りのない真実である事が改めて確約されたとも見ているが、もう一つ重要な事として、おじいちゃんがティッピーの元から離れるのは、少なくとも「智乃ちゃんがおじいちゃんがそばにいなくても大丈夫なまでに精神的に成長した時である事」があり、故に最近のお話でこの様な話題が度々上がると言う事実は、それだけ智乃ちゃんが精神的にも大きく成長を遂げている事の証ともなっていると認識しており、現状智乃ちゃんはまだその事実に対して気持ちが揺れ動いている段階にあるが、何時の日にか必ずその現実と向き合わなければならない時は来ると思うし、そのタイミングの正確な予測については前述の通り私にとっては難しいものの、少なくとも心愛ちゃんの新たなる旅立ちのタイミング辺りまでには向き合う描写があるとは感じている上、今後のごちうさにおいても非常に重要な内容だと考えている。

3.あとがき

 以上がきらま2022年8月号掲載のごちうさを読んだ感想・考察である。今回は「シストに記載されている目的地たる『海』へと向かう」と言う流れから、舞台設定上「海」とは殆ど縁のなかったごちうさにおいてはかなり異色な回であるが、その雰囲気は原作9巻中盤までのごちうさを彷彿とさせるものである事から、テイストそのものはやはり何時ものごちうさであり、何時もの雰囲気を残したまま新たなセカイへと旅立つ構成はとても秀逸だと思う。

 今月号は再三述べて来た様に「『海」が目的地のシストを探究する段階のお話」である為、今月号では海は端役となっているが、代わりに「木組みの街の住人7人の現状や、それぞれが秘めている信念」が重要になっており、その過程では心愛ちゃんの凹み具合や、それに感化された理世ちゃんの涙目など、些かえげつないと言えなくもない内容も含まれていたと思うが、その内容からは「それぞれが持つ成長に関する事や現実との向き合い方」をも感じさせている為、私としても全く心が痛まない訳では無いが、心愛ちゃんや理世ちゃんをはじめとした木組みの街の住人7人の精神的な成長や将来像を改めて知れたのは大きな糧だったと考えている。

 また、今月号終盤ではティッピーがかの「銀河鉄道回」を彷彿とさせる程の意味深長な発言をしていたのもポイントであり、これもやはりえげつない含みがあると言えばそうだと思う上、これに関しても「何れは向き合わなければならない事」であるが、これも智乃ちゃんの精神的な成長を如実に物語っているが故である為、先ほど同様全く動じない訳は無いのだが、これも「智乃ちゃんが何時かは絶対に向き合わなければならない事」だと思えば、私としても逃げずに智乃ちゃんが持つその意思や決断を最後まで見届けるだけである。

 そして、今後の「海」が目的地のシストについてだが、私には前述の様な理由があるが為に予想を付ける事は難しく、故に今後どうなるのかは正直良く分からないが、「このシストが彼女達にとって大きなターニングポイントとなる」とは認識しており、現時点では正しく五里霧中と言える程に謎が多く立ち込めているとは言え、来月以降の展開次第では凄まじい事になるのではないかとも考えており、その過程においては正直ごちうさの根幹をも揺るがしかねない程に衝撃的な内容も出現する可能性もなくはないと考えているが、それも「逃れる事は出来ない絶対的な運命」だと言うなら、私としてはやはり受け止めるだけである。

 ここ最近最後まで今までのごちうさ感想・考察とは一線を画す様な締め方になっているが、これも私がごちうさに対してあらゆる感情を表に出せる様になったという事をもって、この感想・考察の締めとしたい。

 

 

おまけ

今回の文量は全て合わせてのべ400字詰め原稿用紙38枚分である。先月と比べると比較的コンパクトにまとまったが、その想いの強さは全盛期と比べると若干落ち着いているとは言え、依然として高い熱意を安定して保っている状態となっている為、この先もコンスタントに書き続けていくと思う。

*1:木組みの街のどこかに隠された地図を発見する事から始まり、地図を見つけたら、その地図に記載されている場所を探しに行き、その場所に辿り着いたら、そこにおいてある宝物と、自分が大切にしている宝物を交換すると言うもので、木組みの街では昔から知られているものだが、以前のお話で木組みの街の出身ではない心愛ちゃんはシストが何かを知らなかった経緯があった為、少なくとも心愛ちゃんの地元ではそういったものは知られていなかったと考えられる。

*2:事情はそれぞれ異なるが、心愛ちゃんと紗路ちゃんは高校卒業後に木組みの街から離れる事になる進路選択を決断しており、これが意味する事を鑑みれば、今月号にある「不安や後悔の正体」は大分見えてくる。

*3:ただ、理世ちゃんは情に脆い所がある為、情に訴えかけられると一転して綻んだり、心が揺らいだりする事も多いが、大抵は直ぐに元通りになる為、今回の様に情に流されたまま涙ぐんでしまう事は、印象的ではあるが絶対的な回数としては少ない。

*4:但し、夏明ちゃんは麻耶ちゃんが自身の斜に構えた様な発言に対して、意地になって「ナツメは誘ってあげない」と返すと、夏明ちゃんは明らかに不満そうな顔をしていたため、夏明ちゃんにしても「友達と遊びたい」と言う想いは強くある様だが、夏明ちゃんと麻耶ちゃんはお互いの事になると、性格が近い事もあってか2人共に意固地になってしまう傾向がある為、この様な不器用な事になりがちである。

*5:くしんさんたん。非常に気苦労すること。

*6:尤も、冷静に考えてみればある意味それが一番怖いのだが……。

*7:向かい合わせになっている4人掛け座席の事で、嘗ては旅情の雰囲気を掻き立てるものの代表格だったが、今ではすっかり見かけなくなってきている。とは言え、ごちうさコルマールをはじめとしたヨーロッパの都市をモデルとしているので、現実の鉄道事情とはまた違っているのだろう。